2007年10月29日 (月)

(あ) 安全胴衣 SAFETY WAISTCOAT

☆人目を惹く服
 この国イギリスで、とても気になる服がある。日本に帰ったら恥ずかしくて着れないだろう魅惑的な服。

 日本と違って山が少なく平坦なイギリスでは、通勤、通学などの交通手段に自転車を使う人が多い。朝夕の道を行くと、幾台もの自転車とすれ違う。日本のママチャリにあたるシティサイクルを使っている人は少なく、たいてい皆、長距離用のロードサイクルに乗り、しっかりとヘルメットをかぶっている。若い女性もお年を召した方も、颯爽と自転車を乗りこなし、次々と美しい町並みの向こうに消えていく。その分、車の渋滞も少ない。

 最初は、ただただ感心して見ていたのだが、そのうち、訝しい気持ちになった。
 「・・・なんだか、工事現場で働いている人が、やたら多いなぁ。」Safety_waistcoat_bike

 道路工事現場の作業員や誘導係の人が着ているような、蛍光黄色やオレンジのベストを身に着けている人がやたら多いのだ。初めは、どこかの現場に向かう人だろうと思っていたが、老若男女を問わず、挙句には職場の知人まで、この派手なベストを着けて走っているのを目にした。
 

☆イギリスではかなり一般的
 このベスト、イギリスではセイフティ・ウェストコート(safety waistcoar、安全ベスト)や、リフレクティブ・ウェストコート(reflective waistcoat、反射ベスト)と呼ばれている。Safety_wast_coat_construction
 
 ウェストコート(waistcoat)とはイギリス英語で、「ベスト、チョッキ、安全胴衣」という意味。アメリカ英語ではヴェスト(vest)と呼ばれている。日本語の「ベスト」はアメリカ英語から来ているようだ。
 余談だが、チョッキというのは日本語だそうで、英語のジャケット(jacket、jack)に由来するという説や、肌に直接着るという意味(直着、ちょっき)に由来するという説など、諸説あり、よくわからない。 

Safety_waistcoat_police  イギリスでは、安全胴衣や安全ジャケットを身に着けた一般労働者は決して珍しくない。工事現場の作業員だけでなく、街行く警官や郵便配達員、スーパーの買い物カートを片付ける人まで、様々な職業の人が身につけている。おそらく労働安全上の制服として取り入れているのだろう。皆、昼でも着ているし、路上に立っていなくても身に着けている。
 イギリス人にとっては、安全胴衣は一般的にかなり馴染みが深いものなのかもしれない。
 

☆自転車での通学通勤に
 とはいえ、強制でなければ着るのを躊躇ってしまうような恐ろしく派手な見かけ。恥ずかしくないのか。そもそも、一体どこで手に入れているのか。

 どうやら、例の通勤、通学の人達は、皆、自主的に自前の物を用意して着ているらしい。日本の通勤通学用のコートと同じノリのようだ。

Safety_waistcoat_night  イギリスでは、日本よりも、「自転車は車両の一種」という認識が強いように思う。実際に、かなり早いスピードで走っているし、信号や左折右折の交通ルールを遵守している人も多い。そして、暗くなると必ずライトを点灯している。きっと、これらの人も、自動車にエアバッグをつけるような感覚、自転車に反射板をつけるような感覚で、このベストを着けているに過ぎないのだろう。

 そして、その入手先は、イギリスの有名な自転車・車用品専門店、ハルフォーズ(halfords)を始め、近くの自転車屋など。わが町は田舎だからかもしれないが、ハルフォーズや自転車屋の数は郵便局や銀行の数より多いぐらい。また、スーパーの自転車用品コーナーにもあったりする。案外どこでも入手できる代物のようだ。値段は20ポンドほど(約4千円)。

←これは3.34ポンド(約700円)。
イギリス国内のみの発送のようです。(amazon.co.uk)

 自転車と共に散歩している黒い犬まで、飼い主とお揃いに安全胴衣をつけていた。ここまで来ると、唖然を通り越して微笑ましい限り。
 

 連合いの同僚の二十歳代のオシャレな女性も、イギリス大手の職場の重役トップのイギリス人も、このベストを着用して自転車通勤している。後者はわざわざ、誕生日後には新調されたものを満足げにお召しになっていたそうだから、ひょっとしたら、実用以上のものがあるのかもしれない。
 私も試しに、連合いの誕生日に贈って、「強制的に」着てもらおうかなと密かに画策中である。

←日本でも似たような自転車用のジャケットがあるようですね(楽天市場)。

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2007年7月 9日 (月)

(ふ) フェイクタン -後編- FAKETAN part2

 日本の美白ブームとは対極に位置するのではないかと思われるほど、イギリス人は日焼け好き。しかし、現在は、紫外線の危険性が叫ばれ、存分に日焼けできなくなりつつある。
 前編では、そういったイギリスの日焼けの事情、フェイクタンがイギリスの若い女性の救世主になったいきさつをご紹介した。塗るだけで日焼けのように小麦色になれるクリーム、フェイクタン。後編では、その仕組みとその他の擬似日焼け製品についてご紹介したい。
 

☆フェイクタンの仕組み
 フェイクタンの仕組みは、日光浴や日焼けサロンの仕組みとは全く異なる。

Faketan_mechamism_1  ご存知の通り、通常、日焼けで黒くなるのは、紫外線(UV)の刺激により、皮膚を黒くする色素であるメラニンが多く作られるため。メラニン色素が作られるのは、皮膚の表皮の基底層にある色素細胞(メラノサイト)。
 つまり、刺激を与えることによって、細胞に色素を作らせているのだ。

 一方、フェイクタンの場合は、細胞の働きではなく、化学反応を利用している。染料を使っているものもあるが、サトウキビから抽出したDHA (ディー・エイチ・エー)を使っているものが多いようだ。
 DHAといっても、一時期日本で、青魚に含まれる「頭がよくなる」物質として騒がれた「ドコサヘキサエン酸(DocosaHexaenoic Acid)」ではなく、ジヒドロキシアセトン (DiHydroxyAcetone)という物質。

 このDHAが、皮膚の角質中のたんぱく質、ケラチンと化学反応して、肌を小麦色(タン色)にしているのだそうだ。

☆フェイクタンの実際
 ともあれ、百聞は一見に如かずということで、自分達で実際に使ってみた。
 街には数多くのフェイクタン商品が出回っている。自分で簡単に日焼け肌になれるので、セルフ・タン(ニング)(self tan(ning))と表示されていることも多い。
 日本でお馴染みのブランドのものから、スーパーのブランドのものまで様々。ボトルに入ったローションタイプやスプレータイプのほか、シートタイプ(wipe)もよく見かける。ボトルタイプは安価なもので4~9ポンド(約千~2千円)ほど。

Faketan_wipe  連合い共々、元来色黒の上、日焼けしすぎて困っているぐらいなので、ボトルタイプではなく、使いきりのシートタイプを選択した。写真の商品はセール商品だが、一枚入りで0.64ポンド(約130円)。これだけで、顔と両腕、または両足に塗ることができるそうだ。

 中身は予想とは異なり、色が付いていない。一見、単なる分厚いウェットティッシュという感じだ。甘い芳香がする。
 皮膚に塗ってみたが、日焼け止めのように白っぽくなることもなく、すぐに茶色くなることもない。説明によると、3、4時間で色付き始めるそうだ。連合いとともに適当に目立たないところに塗って、一晩放置した。

Faketan_trial  翌朝、見てみると、一応しっかり色付いていた。軽く一度塗っただけなので、それほど劇的な変化はないが、色黒の私達の肌でも塗ったところが分かる程度だった。部分的に塗った所などは、傷などで色素が沈着した痕にちょっと似ている感じ。

 ちなみに、この効果はもちろん永遠ではない。皮膚の上層は絶えず新陳代謝により、入れ替わっているので、フェイクタンを塗るのを止めれば、放っておくだけで、大抵1週間から10日ほどで元の肌の色に戻るそうだ。

←フェイクタンムース(楽天市場)
日本でも発売されているようですね。

   
☆その日だけならブロンザー

 また、ブロンザー(Bronzer)というものもよく出回っている。こちらは手っ取り早く一時的に「ブロンズ」色にするもの。
 日本でも、ファンデーションやチークのように顔に使う化粧品の一つとして使われているようだが、こちらでは全身用も多く出回っているようだ。

 大抵、石鹸で洗えば落ちるので、その日だけ日焼け肌になりたい人や、フェイクタンや普通の日焼けのむらを補うのに使われているようだ。

←こちらは、ブロンザー兼フェイクタン。
アメリカ製です。(楽天市場)

 
☆黒くなる日焼け止め---日焼け増強剤

 フェイクタンもブロンザーも肌への害はないようだが、紫外線を避けるために日焼け止めを塗らなくてはならないのは、普通の状態と変わりない。
 
 日焼け止めで紫外線を防止しつつ、フェイクタンを塗る。そんな面倒なことが出来ない人のためかどうかは知らないが、最近では、日焼け止め効果のあるブロンザーや、肌を黒くする日焼け止めも出回っている。

 後者は、タン・インテンシファイヤー(tan intensifier、直訳「日焼け増強剤」)と呼ばれる日焼け止め。日焼け止めなのに日焼け肌になるという不思議な商品だ。
 

☆黒くなる日焼け止めの仕組み
 タン・インテンシファイヤーの仕組みは、DHAを使ったフェイクタンの仕組みとはまた異なっている。通常の日焼けと同様に、細胞の働きを利用してメラニン色素を増やすことによって黒くするのである。

Faketan_intensifier_1  通常の日焼けの場合、紫外線(UV)の刺激が体の皮膚の細胞に伝わると、色素細胞(メラノサイト)を刺激するホルモン(α-MSH)が作られる。そのホルモンに刺激されて、色素細胞が活性化し、メラニンが合成される。

 この肌を黒くする日焼け止め、タン・インテンシファイヤーの場合、日焼け止め成分の他、色素細胞刺激ホルモン(α-MSH)と同じ働きをする物質、いわばそっくりさんが含まれている。だから、他の日焼け止めと同様に有害な紫外線をブロックしつつ、同時に、色素細胞を刺激してメラニンの合成を促進するのである。

 気になるのは安全性だが、もともと、メラニンが合成されるのは紫外線から身を守るため。白い服よりも黒い服のほうが日焼けしにくいのと同じ仕組みで体を防御しているのだ。だから、人工的にメラニンを増やすことは基本的には何も問題がないとされているようだ。(注)国によっては認可されていない場合があるようです。

 例えば、PIZ BUINというブランドの商品。Melitanという、色素細胞刺激ホルモンと同じ働きをする物質が含まれており、50%近くメラニンの量が増えるそうだ。
 このブランド、オーストリアに拠点を置き、イギリスだけでなく、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパにも普及しているようだ。

←PIZ BUINのタンニング・ローション(amazon.co.uk)
イギリス国内のみの発送のようです。

Faketan_summary_1  フェイクタンにしても、日焼け増強剤にしても、テクノロジーを使って開発された商品。欧米の人達はそこまでして黒くなりたいのか、なんて思ってしまう。白い肌に憧れてきた日本人の私からすると不思議で仕方がない。

 いや、もしかして、日本もこれからは一般にも色黒ブームになるのだろうか。それとも、欧米に美白ブームがやってくるのだろうか。
 
 いずれにせよ、イギリスの夏の日差しに照らされて、職場や街への自転車の往復だけで真っ黒になっているうちの家族にとっては、フェイクタン製品はどれも全く無用の長物だ。
 

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2007年7月 5日 (木)

(ふ) フェイクタン -前編- FAKETAN part1

☆美白ではなく「タン」---色白は太って見えて不健康そう?
 日本にいた頃は、女性の間でずっと美白ブームだった。おそらく、今でもそうなのだと思うが、ここイギリスでは、美白はそれほど注目されてはいない。

 イギリス在住者の殆ど(90%以上)は白人。実際、皆、かなりの色白だ。あまりにも青白いので、初対面だと、体調をどこか崩しているのではないかと思ってしまうような人も多い。

 映画『ハリーポッター』シリーズに登場する、主人公の友人、ロン。若い男女でも、あんな感じ。知り合いのイギリス人女性も、全く日焼けを気にしていないのに、夏も冬も真っ白。そばかすだけが妙に目立っている。

←『ハリーポッター』のポスター(楽天市場)。
   3人とも色白のイギリス人ですが、右端のロンが典型的なイギリスの若者像に
 一番近いような気がします。

 私たち日本人にとって、白い肌、明るい色の髪が憧れだったように、彼らにとっては、逆に、日に焼けた小麦色の肌が憧れなのだ。
 その理由は、健康に見えて、さらに痩せて見えるからだそう。肥満の多いイギリスでは、後者の理由もかなり重要なようだ。その視覚効果のほどはあまりわからないのだが。
 また、ここ何年間は、特に、パリス・ヒルトンやヴィクトリア・ベッカムなどのセレブの影響も大きいようだ。

←ヴィクトリア・ベッカムのソロアルバム『ヴィクトリア』(楽天市場)
 元スパイスガールズ(祝?再結成)。日本では、サッカー選手の
 
デビット・ベッカムの奥さんと言ったほうが通りがよいかもしれません。


☆美白ではなく「タン」---「日焼け」が大好き?
Faketan_sunbath  芝生に寝転がって日光浴をする人もまだまだ多い。気持ちいいというのも理由の一つかもしれないが、肌を焼くという習慣が残っているのだろう。

 「日焼け」の英語いうと、”sunburn (サンバーン)”という単語を真っ先に思い浮かべるかもしれない。日光(sun)によるやけど(burn)。

 しかし、こちらの人にとっては、むしろ”suntan (サンタン)”。日光(sun)によって、いい感じの肌の色になる(tan)という意味だ。単に”tan (タン)”とだけも呼ばれ、”have a tan”や”get a tan”という言葉もよく使われる。

 肌を「タン(tan、日焼けした色)」にするということは、若いイギリス人女性にとって、望ましいことのようだ。

Faketan_tan  ちなみに、タンという色は右の図のような色だそう
 

☆「日に当たらずに黒くなる」
 しかし、イギリスでも、紫外線の危険性が認知されつつある。日光浴はがんになる確率を高めることが、声高に言われ、スーパーやドラッグストアー、デパートでも日焼け止めが並ぶ。日光浴が一般的な文化だけあって、体用の大きなボトルも数多く並んでいる。
 最近は、日焼け止めを塗って、日光浴をしている人も多いようだ。

 日焼けはよくないとあちこちで叫ばれる割に、陽射しに照らされたきれいな小麦色肌の女性の映像や写真がテレビや雑誌を賑わし、若い女性の心を揺さぶっている。

 「日焼け肌になりたいのに、日光を避けないといけない。」 、「日光浴をしても赤くなるばかりできれいに色付かない。」 こんなジレンマを持つ女性に根強く支持されているのが、フェイクタンだ。自分で簡単にできるのでセルフタンニング(self tanning)とも呼ばれている。
Fakrtun_store  塗るだけで日焼けのように小麦色になれる製品。クリーム、ローションタイプやスプレータイプ、泡状タイプなど様々なが出回っている。

 
 塗るだけで日焼け肌になれるフェイクタン。その詳細は後編で。その他の偽日焼け剤も登場しますので、お楽しみに。
 

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