2007年5月31日 (木)

(ひ) 肥満 OBESITY

☆「ギルバートグレイプのお母さん」
 『ギルバート・グレイプ』という映画をご存知だろうか。1993年(平成5年)のアメリカ映画で、ジョニー・ディップ主演。レオナルド・デカプリオが知的障害者の役を好演している。物語は、主人公が家族愛ゆえの束縛と自由との狭間に悩みながら成長していく青春ドラマである。

←『ギルバート・グレイプ』DVD(楽天市場)

 この主人公の母親は過食症で家からでることすらできないほど太ってしまっている。物語自体はとても感動的なのだが、この超肥満の母親像はちょっと誇張過ぎだよなと思っていた。

 しかし、周知のように、アメリカでは現実でも同じようなことが起こっている。2004年(平成16年)の『スーパー・サイズ・オブ・ミー』という映画では、毎食マクドナルドのハンバーガーばかりを食べるとどうなるかということを、監督自身が身を持ってドキュメンタリーとして伝えている。

スーパーサイズ・ミー 通常版 DVD スーパーサイズ・ミー 通常版 (amazon.co.jp)

 そして、肥満が広く認識されているのはアメリカばかりではない。
 
 

☆イギリス人の体型、虚像と現実
 日本にいた頃から私の中では、ヨーロッパでも、特に中年以降の人は肥満が多いというイメージがあった。ドイツ人はジャガイモとビールのため、フランス人も食への関心が強いため、といった感じで。しかし、イギリスは痩せ型の人が多いとずっと思い込んでいた。

 おそらく、男性では、チャールズ皇太子をはじめ、NHKでやっていたイギリス制作の『シャーロックホームズの冒険』の主演俳優のジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)や、ヒュー・グラント(Hugh Grant)、ダニエル・デイ=ルイス(Daniel Day-Lewis)、女性では、故ダイアナ元妃、エマ・トンプソン(Emma Thompson)やケイト・ベッキンセール(Kate Beckinsale)といったスラッとした痩せ型の人をサンプルとして見て来たためかもしれない。

シャーロック・ホームズの冒険[完全版]DVD-BOX 1
↑左から順に、ジェレミー・ブレット、ヒュー・グラント、ダニエル・デイ=ルイス、エマ・トンプソン(右二つ)、ケイト・ベッキンセール (楽天市場)

 また、渡英前に知り合ったイギリス人は、「自分達は食べるために暮らしているのではなくて、暮らすために(仕方なく)食べている。」と言っていたし、今までに日本で出会ったイギリス人は皆それほどには太っていなかったせいもあるかもしれない。

Obesity  そういうわけだから、日本を出発して十何時間後に到着した異国の一般的な光景に目を丸くしてしまった。

 町にはあちらこちらに、「ギルバートグレイプのお母さん」予備軍の人が。皆、歩行がかなり困難そうだ。まるで幼児のようなよちよち歩きになっている。肥満のため歩行不可能になったのか、それとも歩けないために結果的に太ってしまったのか不明だが、車椅子に乗った肥満の人もかなりの頻度で見かけるほどである。

 そして、やはり全体的に日本に比べてふくよかな人が多い。若い女性でもおなかがぽっこりと出ている。腰まわりの贅肉を表す「スペア・タイヤ  (spare tyre/tire)」というスラングまでイギリスにあるほど。そう、車の交換用のタイヤが胴回りに付いているような体型のことだ。

 あまりにもおなかが出ているので、渡英当初は、妊娠しているのだと思って、車中で無条件で席を譲っていた。妊婦の頻度の高さに何かおかしいと気付いたのは渡英後半年ほど経ってからのことだった。
 

☆肥満の基準は?---イギリスは統計的にも肥満大国
 イギリスの特に田舎の人たちは、日本に比べて明らかに肥満の傾向があるのが見て取れるのだが、統計にもしっかりとイギリスは肥満大国であることが表れている。

 肥満の基準はなんなのだろうか。国や人種によって体型や体格が違うため、その国の標準体型を基準にしていては、その人が国際的に肥満に分類されるのかどうかはわからない。日本で「太め」と認識される人でも、こちらに来ると「痩せている」と認識されるように。

Obesity_bmi  そこで出来た国際的基準の判断となるものが、日本でもよく使われている BMI、ボディマス指数(Body Mass Index)というものである。
 体重(Kg)を身長(m)の2乗で割った値で、WHO(世界保健機構)によると、BMI値 25以上が標準体重超過(overweight)、30以上が肥満(obesity)と定義されている。

 アジアやアフリカでは標準BMI値は22~23であるのに対して、北アメリカ、ヨーロッパ、一部のラテンアメリカ、北アフリカ、太平洋諸国では25~27だそうだ。

Obesity_comparison  2004年(平成16年)のイギリスのBBCの報告によると、イギリスの成人の肥満率はこの25年間に4倍に増えており、国民の22%が肥満(BMI≧30)、4分の3が標準体重超過(BMI≧25)になっているそうだ。また、子供においても、肥満率はこの20年間に3倍に膨れ上がっており、6歳の子供の10%が、15歳の子供の17%が肥満だそう。

 日本では、18.5未満を「やせ」、18.5以上25未満を標準、25以上を肥満とし、肥満の中でも25以上30未満を肥満1度、30以上35未満を2度、35以上40未満を3度、40以上を4度としているようである。
 日本では体脂肪率を基準とする場合も多いが、こちらイギリスではあまり聞かない。
 ちなみに、日本では、肥満(BMI≧30、肥満度2~4)は2~3%、標準体重超過(BMI≧25、肥満度1)は、国民の4分の1弱だそうである。
 

☆どうして肥満に?
Obesity_trolley  体質的には日本人のほうがずっと太りやすいそうだが、イギリス人の暮らしを見ていると、肥満人口がこの国に多いことに関して、何の不思議も感じないだろう。とかく、脂肪分や糖分の多いものを大量に食べるのだ。

 イギリスの一般的な料理の特徴は、ジャガイモ料理、揚げ物料理、バターで炒めて生クリームを加える料理、パイやタルトなどの料理が多いことである。そして、お菓子やデザートは甘く、クリームをたっぷりと添えることが多い。

 実際、こちらに来て困ったのが、ちょっとつまむ程度のおやつ。日本では、薄焼きせんべい、普通のせんべい、あられなどの米菓や、軽い焼き菓子やかりんとう、小袋に入ったポッキー、プリッツ類、小箱に入ったチョコレートなどを食べていた。日本には糖分は高いが油分が少ない和菓子もある。洋菓子も少量ずつパックされているため、大食いしなければそれほど体型に影響はでない。

 しかし、イギリスのお菓子は、ポテトチップス系か、チョコバー、そして、おいしいのだけど大量に入っているシュークリームやケーキなどの洋菓子系。これらの油、小麦粉、バター、砂糖で出来たお菓子を毎日つまんでいると、いつの間にやら小イギリス人の出来上がりというわけだ。
 
 

☆ダイエット・痩身術が大流行
 肥満人口の急激な増加のためだろうか、イギリスは今や国中がダイエット・痩身ブームと言ってもおかしくない状態である。

 女性週刊誌はいかにして痩せるかという見出しばかり。何ストーン体重を減らしたという体験談もよく見かける。ストーン(stone、石)とは、イギリスで使われる体重の単位だが、1ストーンは約6.35Kg。小石ではなく、岩という感じがする。
 食品も低脂肪、油分XX%カットと書かれた商品が数多く出回っている。ウェイトウォッチャーズ(Weight Watchers、意訳「ダイエット中の人」)というアメリカのダイエット製品会社のブランドも、ヨーグルトからワインまであちこちで見かける。
 Weight Watchers.co.ukのサイトはこちら(英語)。

 学校の給食も、日本でもお馴染み(?)のイギリスの若手カリスマシェフのジェイミー・オリバーがキャンペーンをおこなって、従来のフライドポテトやチョコレートが入ったメニューから、肥満を防止するヘルシーなものに変わってきている。

ジェイミー・オリバーのラブリーダイニング(楽天市場)

 テレビ番組も例外ではない。中でもびっくりしたのが、痩身のTV番組。肥満の人を脂肪吸引して変身させるというものだ。実際に吸引しているシーンを見せるので、少々、いやかなりグロテスク。

 しかし、また逆に、肥満した裸をいかに美しく見せるかという番組までやっていた。最後には都会のど真ん中にその人の大きなポスターが飾られるシーンが放映されていた。それを見て、連合いは目を覆い、私は裸婦の絵画を思い出した。
  

☆肥満は悪いこと?
 日本では、太っているとその人の人格さえ否定されてしまう場合も多いような気がする。太っている人に対して、冷ややかな視線を送る人も少なくないのではないだろうか。しかし、イギリスでは、人の概観によって明らかな差別をすることは少ないように思う。国民の大半が太っているからだろうか、肥満に対する差別意識はあまり感じられないように思う。
 男女の関係においても同様のよう。日本では痩せている異性が好まれる傾向があるが、こちらではそれ程には肥満度は恋愛度と相関性がないようだ。

 歩けなくなってしまったり、健康を害するまでになってしまうほど太るのは論外だが、痩せている人よりも太っている人のほうが寿命が長いという統計まであるぐらいだ。ある程度太っていることは、それほど悪いことではないのかもしれない。

 そう言いつつも、一時帰国で日本に戻った時に、「太ったね。」、「中年太りじゃない?」と言われ、ショックで食が細くなった私たち夫婦。皆、自分だけは痩せていたいと思うものなのかもしれない。
 

☆ランキングに参加しています☆
気に入ってくださったら、 ←クリックしていただけるとうれしいです。

| | コメント (4)

2007年5月17日 (木)

(ひ) ピーナッツアレルギー -後編- PEANUT ALLERGY -part2-

 ピーナッツ入りのランチの禁止から、ピーナッツを乳幼児に与えるかどうかを研究する大プロジェクトまで、イギリスで大きな社会問題に発展しているピーナッツアレルギー。(前編はこちら)。
 たかが、ピーナッツ。食べなければいいじゃないかと思われるかもしれない。しかし、それで安心できないのが、このアレルギーの厄介なところだ。
 

☆ピーナッツアレルギーの厄介な特徴
 イギリスでも、もちろん、牛乳アレルギー、小麦粉アレルギーなど、他の食物アレルギーや、花粉症、アトピーなどのアレルギーも、軒並み増加している。
 しかし、ピーナッツアレルギーがここまで問題になるのは、多くのアレルギー同様、一度、発症すると生涯、アレルギーを持ち続けるというほかに、他のアレルギーではあまりみられない恐ろしい幾つかの特徴があるからだ。
 

・恐ろしいアナフィラキシー
 ピーナッツアレルギーで一番怖いのは、アナフィラキシーという急性アレルギー反応だろう。これは大抵、食後1時間以内に起こるようだ。

 その症状は様々。軽いものでは、触れた部位(皮膚、唇、舌など)が痒くなったり、腫れたりする。また、咳が止まらなくなったり、下痢や嘔吐、痙攣を起こす場合もある。
 そして、さらにひどい場合には、呼吸困難になったり、意識を失ったりする。また、時には死に至ることもありうるのである。
 

・極微量でもダメ
 他の食物アレルギー同様、ピーナッツアレルギーの治療法はまだ見つかっていない。だから、アレルギー症状を起こさないためには、ピーナッツを回避するしかない。

Peanut_allergy_question しかし、そば(蕎麦)などのように、ピーナッツそのものや、ピーナッツバター、ピーナッツチョコなどのピーナッツ食品を食べなければ大丈夫というわけにはいかない。
 ピーナッツのタンパク質は、胃から免疫細胞に大量に迅速に運ばれやすい性質を持っている。そのため、ほんの微量でも入っていればアレルギー症状を引き起こしてしまうからだ。

 おまけに、少なくともイギリスでは、ピーナッツなどのナッツ類は、意外なことに様々な食品に含まれている。チョコレートバーや、ケーキ、ビスケットの他、アイスクリーム、フルーツヨーグルト、シリアル、マーガリン、ドレッシングなど、一見、ピーナッツとは直接関係なさそうな食品にもごく僅かに入っていたりする。

 食品加工工場では、ピーナッツ油は「グルメ油(gourumet oil)」と呼ばれよく使われてきた。また、このグルメ油を使っていなくても、原材料にピーナッツが使われていなくても、製造過程でピーナッツの成分が混入してしまうことがあるそうだ。それは、製造ラインでは、しばしば機械を洗浄して違う製品を作ることがあるが、前の製品で使われたピーナッツ油が充分に洗い落とせてない場合があるからだそうだ。

 そういった場合、ピーナッツが入っていると知らずに食べてしまい、大変なことになってしまう。映画化されたダン・ブラウンの『ダビンチ・コード』においてもピーナッツアレルギーで殺人がおこなわれるシーンが登場するが、ああいった恐ろしさ。

ダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディション DVD ダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディション
(Amazon.co.jp)

 また、食べ物だけはなくキスすら危ないと言われている。その日にピーナッツバターを食べたボーイフレンドとキスをした女の子がアナフィラキシーショックで死亡したと報道された2005年のカナダのニュースを覚えている人もいるのではないだろうか。
 そのニュースはこちらのBBCからご覧になれます(英語)。(注)最近では否定的な見解がだされています。
 

・他のナッツもダメ---交差反応
Peanut_allergy_cross_reaction  また、他のナッツを食べてもピーナッツアレルギーの症状が出てしまうことがある。他のナッツとは、アーモンド、胡桃、ヘーゼルナッツ、ブラジルナッツなどのナッツのこと。
 イギリスの食物アレルギーの情報を公開しているインフォモールデーターベースによると、ピーナッツアレルギーを持っている人の3~5割は、これらのナッツの少なくとも1つに対して、アレルギー反応を起こすそうだ。これは、それぞれのアレルゲンが似ているために起こるもので、交差反応(cross reaction)と呼ばれている。
 
 ピーナッツは、えんどう豆や大豆などと同じマメ科(legme)の一年草。「ナッツ(種子)」という名が付いているものの、木の実ではない。一般に、交差反応は近縁種のアレルゲンで起こりやすい。しかし、ピーナッツアレルギーの場合は、近縁種の大豆では比較的大丈夫なことが多く、系統的に遠く離れたナッツ類に反応するそうだ。
 

☆とにかく避けるしかない
Peanut_allergy_advice  イギリスでは、2005年の11月から、ナッツを含む食品の表示が義務付けられている。
「極微量のナッツが入っているかもしれません。(May contain traces of nuts.)」といった可能性表示も多く見かける。また、調理法(recipe)、材料・成分(ingredients)、製造過程(factory)の項目に分かれて、ナッツの有無が記されているものも数多くある。
 ピーナッツアレルギーに罹ってしまったら、現在では、とにかくこの表示を参考にして、ピーナッツを避けるしかないようだ。

 ピーナッツアレルギーの問題は、10年後には解決するだろうと言われている。
 

 いまでも、店頭にはもちろんピーナッツバターは置かれているが、こころなしか、最近はひっそり息を潜めているような気がする。子供の頃、TVで見たおいしそうにピーナツバターサンドイッチにかぶりつく子供の姿が懐かしい。
 

☆ランキングに参加しています☆
気に入ってくださったら、 ←クリックしていただけるとうれしいです。

| | コメント (4)

2007年5月14日 (月)

(ひ) ピーナッツアレルギー -前編- PEANUT ALLERGY part1

Peanut_allergy_sandwich_1 ☆ピーナッツバターサンドイッチの行方
 子供の頃、テレビで欧米の子供が「ピーナッツバターサンドイッチ」なるものを弁当として持って行っているのを見て衝撃を受けた覚えがある。その名の通り、単にサンドイッチ用のパンにピーナツバターを塗ってはさんだだけのサンドイッチ。

 日本では、弁当といえば、おにぎりに様々なおかずが普通だった。サンドイッチにしても、ハムやキュウリ、トマトなど、色々な具材が入っていた。だから却って、シンプルで物珍しいサンドイッチに憧れたものだ。

 しかし、この子供のランチの定番の一つが、イギリスでも今や殆ど姿を消しつつある。栄養面が考慮されたためとか、人気がなくなったからというのが主たる原因ではない。ピーナッツアレルギーのためである。
 

☆どうして「ピーナッツ」?
 イギリスでは、ピーナッツアレルギーはこの10~20年で劇的に倍にまで増えている。現在も、小学生の70人に1人がナッツアレルギーを患っているそうだ。
 多くの学校や託児所では、たとえ本人がピーナッツアレルギーを患ってなくても、ピーナッツバターサンドイッチといった、ピーナッツを含むランチの持参を禁止しているそうである。

 日本でも、大豆や卵、牛乳、そばなど、様々な食物アレルギーの子供が増えていることが問題になっている。それらのアレルギーの中には、ピーナッツ(落花生)アレルギーも含まれ、表示が義務付けられているが、それほどメジャーではないように思う。

 ピーナッツアレルギーがイギリスでここまで顕著に増加し、主要な食物アレルギーになっているのは、やはりイギリスにおけるピーナッツ製品の普及とその使われ方にあるのだろう。
 

☆ピーナッツ食品や製品の普及率
 ピーナッツは南アメリカが原産。イギリスには第二次世界大戦頃に入ってきたそうだ。以来、モンキーナッツ(monkey nut)や、グラウンドナッツ(ground nut)、アースナッツ(earth nut)と呼ばれ、子供の手軽なスナックや、パンに塗るピーナッツバターとして、親しまれ続けてきた。どちらも常温保存できる良質のたんぱく質源として重宝されていたようだ。

 現在、町でも、ローストピーナッツやハニーローストピーナッツが他のナッツのスナックと共に、ポテトチップスや他の塩系の菓子コーナーに数多く並んでいる。

←ハニーローストピーナッツ(イギリス産ではありませんが・・)(楽天市場)

Peanut_allergy_oil  サラダ油やひまわり油についで、ピーナッツ油もよく使われているようだ。オリーブ油やゴマ油などの他の食用油の殆どは瓶入り250mlが主流だが、ピーナッツ油は、サラダ油などと同様、500mlや1Lのプラスティック容器に入っている。

 ちなみに、イギリスでは、同じピーナッツでも、殻付きのものは「モンキーナッツ(monkey nut)」、殻をむいたものは「ピーナッツ(peanut)」、油に使われている場合は「グラウンドナッツ(ground nut)」と、別の名前で呼ばれることが多いようだ。

 
☆ピーナッツアレルギー増加の原因は?
 ピーナッツアレルギーの子供が急増したのは、母親が妊娠中や授乳期にピーナッツを多く食べたためだという説がある。大量のピーナッツのアレルゲンが母乳を通して子供に行き渡ってしまったためというものである。

 また、大量に食べたピーナッツによるものではなく、直接、赤ん坊に与える既成食品や、親子で使うスキンケアクリームに含まれるピーナッツ油が原因だという説もある。昔は、ピーナッツバターは離乳食品としてよく活用されていたようである。また、授乳時の母親のおっぱいのケアや、乳児脂肪冠(cradle cap)という皮膚炎を持つ赤ん坊のケアに使うスキンケアクリームにピーナッツ油が含まれている場合があったそうだ。
  
 また最近では、ピーナッツを食べた親などにキスされたことが原因かもしれないという説まで出されている。実は、ピーナッツアレルギーを持っている人の殆どが、乳児期にアトピー性皮膚炎などの湿疹を患った経験があるそう。おそらく、キスと湿疹を通じて、親の唾液の中のアレルゲンが子供の体内に入り、免疫作用が増幅され、ピーナッツアレルギーにかかってしまったのではないかという説だ。
 欧米では、キスは重要なスキンシップの一つ。自分の愛情表現が子供をアレルギーにしてしまったかもしれないなんて、悲しい話。
 そのニュースはこちらのインデペンデント誌のニュースからご覧になれます(英語)。

 今では、妊娠中や授乳時にピーナッツの摂取を控えたり、ピーナッツオイルを含む製品を使用しないよう指導がおこなわれているようである。また、3歳未満の子供にもピーナッツ食品を与えないようにも呼びかけられている。
 

☆10億円プロジェクト
 しかし、逆に乳幼児の頃にピーナッツ食品を与えたほうが適度な免疫力がついてよいという説まである。
 現在でも、どうしてこんなにピーナッツアレルギーが増えたのか、どうやったら避けることができるのか、ということは全くわかっていないのである。

 はたして、乳幼児にピーナッツを与えないほうがいいのか、与えないほうがいいのか。いつからピーナッツ入りの食品を食べさせてもいいのか。親にとっては深刻な問題だ。
 これを解明するため、イギリスでは、2006年から7年間に5百万ポンド(約10億円)という膨大な時間と費用をかけての大プロジェクトが始まっている。

 これは、4ヶ月から11ヶ月までの湿疹や卵アレルギーのある乳児、約500人を対象に、ピーナッツを与えて育てる子供と、ピーナッツを全く与えずに育てる子供にわけて、後にピーナッツに対するアレルギーを持つかどうかを研究調査するもの。

 結果がわかるのは5年後というから、少々気の長い話。下手をすると半数の子はひどいアレルギーになってしまうんじゃないかと素人の私は心配になってしまうが、さすがは、古くから自然科学やボランティア精神が発達していたイギリス。この辺の一般市民の協力体制や理解は素晴らしい。
 このプロジェクトに関するニュースは、こちらのBBCのサイトからどうぞ(英語)。右上の”video and audio news”からはニュース映像をご覧になれます。
 さらに詳しく知りたい方は、こちらのピーナッツアレルギーの情報サイトLEAPをご覧ください(英語)。

 

 
 日本人の知り合いにそば(蕎麦)アレルギーの人がいる。そば屋には連れ立って行くことはできないものの、その他は取り立てて困っている様子はない。
 「たかが、ピーナッツ。そばように、食べなければ特に問題ないんじゃないか。」と思われるかもしれない。日本ではどの程度なのかよくわからないのだが、イギリスではそういうわけにはいかない。
 後編では、イギリスで、ピーナッツアレルギーがここまで問題になるのはどうしてなのか、ピーナッツアレルギーの特徴について、ご紹介したい。

 後編はこちら
 

☆ランキングに参加しています☆
気に入ってくださったら、 ←クリックしていただけるとうれしいです。

| | コメント (2)