2008年6月 9日 (月)

(ほ) ポークパイ -後編- PORK PIE -part2-

Pork_pie_part2  前半では、ポークパイとは何なのか、どうやって作るのか食べるのかということをご紹介した。この後半では、もう少し深く、ポークパイの話題に触れてみようと思う。
 

☆メルトン・モウブレイのポークパイ
 ポークパイといえば、メルトン・モウブレイのポークパイ。
 メルトン・モウブレイ(Melton Mowbray)とはイギリス中部のレスターシャーにある町で、スティルトン・チーズでも有名なところだ。ちょっと例えが違うかもしれないが、日本の名古屋コーチンや伯方の塩といった感じで、地域名が特別な銘柄になっている。

Pork_pie_melton_mowbray  大抵のスーパーに置いてあり、スーパーブランドの物まで出ているのだが、今後、ひょっとすると、さらに多少事情が変わってくるかもしれない。

 それは、このポークパイがこの4月(2008年4月)にPGI (地理的表示保護(Protected Geographical Indication))を獲得したからだ。これは、EUで1992年に制定された地域特産品の保護制度の一つ。要は、「特定の地域で特定の製法で作ったものだけが、その名前を使うことができる」*という商標登録のようなものだ。EUの法律なので、イギリスだけでなく、EU加盟国に適用される。例えば、イタリアのゴルゴンゾーラチーズなどがこの制度で守られている。*
 *(注)実際には、この保護制度は、製法と地域を厳しく限定したPDOと、製法の過程の規制が多少緩やかなPGIと、地域を限定しないTSGの3つに分類され、ゴルゴンゾーラチーズはPDOに属します。
 長くなるので、また別の記事で詳しくご紹介したいと思いますが、興味のある方はこちらの欧州連合(Europian Commition)の農業農村開発省(Agriculture and Rural Development)のサイトをご覧ください(英語)。

 メルトン・モウブレイ・ポークパイの製造業者が運営するメルトン・モウブレイ・ポークパイ協会(the Melton Mowbray Pork Pie Association、略称MMPPA)は、10年間法廷で争って、PGIを獲得したのだそうだ。
 メルトン・モウブレイ・ポークパイ協会のサイトはこちら(英語)。トップページで様々な形のメルトン・モウブレイ・ポークパイの写真をご覧になれます。

 そもそもポークパイそのものを知らなかった私にとっては、単なる名前だけだと思っていたのだが、協会によると、メルトン・モウブレイのものと、他のポークパイは全く別物で、味だけでなく、見かけも違うのだそう。

Pork_pie_mm_vs_others_3  まず、生地の形。普通のポークパイは焼き型に入れて焼かれるため、側面がまっすぐになっているが、メルトン・モウブレイ・ポークパイの場合は焼き型を使わないため、側面が軽いカーブを描いているのだそうだ。
 また、中も、メルトン・モウブレイのものは、保存肉ではなくミンチ肉を使っているので、中がロースとポークのように灰色をしており、(荒びきソーセージのように)肉の粒が確認できるそうだ。また、ゼラチン質も多いのだとか。
 

☆ポークパイのウェディングケーキ!?
 もちろん、メルトン・モウブレイのポークパイだけが、ポークパイというわけではない。手作りのポークパイの愛好者も多くいる。
 ポークパイ協会(The pork Pie Association Society) なるものまであって、毎年、イギリス中の最高のポークパイを競う大会が開かれているのだとか。
 そのポークパイ協会のサイトはこちら(英語)。100歳の誕生日をポークパイ作りコンテストで祝った人の話も紹介されています。

 また、2005年には、ポークパイで出来たウェディングケーキで結婚式を挙げたカップルもいる。3重の塔になっており、その総重量は22.6Kg。
 そのケーキはこちらのBBCニュースのサイトからご覧になれます(英語)。

 イギリス人にとって、ポークパイは単なる酒のつまみ以上のものがあるのだろう。
 

☆ポークパイの帽子
 しかし、日本のおしゃれな男性の中には、ポークパイというと食べ物ではなく、むしろ帽子を思い浮かべる人もいるかもしれない。

 主にフェルトで出来た、上の部分が平らなつばの小さい帽子だ。今ではリネンや紙で出来ているものもあるのだとか。アメリカのジャズやブルースの歌手が身につけていたのを目にした人もいるかもしれない。

←ポークパイハット(楽天市場)

 この帽子、その名の通り、その本体部分の形がポークパイに似ていることから、この名で呼ばれている。つまり、イギリス発祥の帽子なのだ。19世紀頃からあるもので、長い間、イギリスの遊び人男性の必須アイテムだったそうだ。

 さんさんと日の光が降り注ぐ(時もある)イギリスの初夏。表でポークパイをつまみながらビールを飲む人はいても、ポークパイハットをかぶっている人はあまり見かけないように思う。 

 
 ちなみに、前編の冒頭のビアフェスティバルだが、ポークパイを注文した時のこと。受け付けの人は大変喜んで親指を立てるジェスチャーまでしてくれた。
 それだけイギリス人のポークパイへの思い入れが深いのか、単に余っていて売れてほしかったのか、今となっては知る由もない。
 

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2008年6月 2日 (月)

(ほ) ポークパイ -前編- PORK PIE -part1-

Pork_pie  イギリスに来る前から、名前だけは聞いたことがあった。渡英した後も、パブのメニューでもしばしばその名を目にした。スーパーの惣菜コーナーでも、いつもその姿を見かけていた。

 しかし、一向に食べる気がせず、最近まで口にしなかったのがポークパイ(pork pie)だ。豚のミンチ肉がパイ生地に包まれたイギリスの伝統的な食べ物。直径7~12cmほど、高さ5cmほどの大きさで、スーパーでは冷蔵のものが店頭に並んでいる。

 「なんだかパサパサでこってりして美味しくなさそう。」、そう思っていつも避けていた。
 

☆最高のビールのつまみ?
Pork_pie_beer_festival  しかし、ビアフェスティバルで、いわゆる「つまみ」を選択する時に、ふと目にはいった。その他は、様々な種類のチーズにハム、ゲームと呼ばれる燻製の鳥。この際だから、ついでに頼んでみるかと、ポークパイを注文した。

 ドデンとそのまま皿にもられたポークパイ。冷蔵の棚から出されたのに、温められることはなかった。「ビアフェスティバルの簡易の施設だから、温めができないのか。」と思って、そのまま、清算し、席に着いた。

 ビールをチビチビと飲みながら、つまみに手を伸ばす。どっしりとした冷たいポークパイにも。
 さぞかし不味いことだろうと思ったが、意外にうまい。冷めているので臭みや脂っこさは殆どなく、パサパサもしていない。中の豚肉はわずかにしっとり、外の生地はサクサク。塩加減もなかなかいい感じ。ビールやその後に飲んだサイダーによく合っていた。

 1個でかなり腹がふくれるのでお代わりをするにはいたらなかったが、その日以来、ポークパイにすっかりはまってしまった。
 和食には全く合わないのだが、どうしても食べたくなり、連合いがご飯とおかずを食べている傍ら、スーパーで買ってきたポークパイをつまみながら、サイダーを飲む始末。100%和食人間で肉嫌いの連合いは、4分の1切れで充分だと言っていたが。
 

Pork_pie_inside☆パイ生地とゼリー層
 「パイ生地」と表現したが、外の生地は、ホット・ウォーター・クラスト・ペイストリー(hot water crust pastry)というもの。その名の通り、水ではなく湯を使って生地を練り上げた、しっかりとした生地だ。湯を使うのは、通常の生地とは異なり、バターではなくラードを練り混むためだそうだ。
 
 中には、日本のソーセージのように、味付けされた豚肉ミンチが詰まっている。そして、最大の特徴は、パイ生地と豚肉ミンチの間でほのかに光るゼリー層。

Pork_pie_jelly  コンソメゼリーや日本の煮こごりというゼラチン質を固めた冷たい料理を彷彿させるような感じの透明感のあるゼリーだ。これはゼラチン質(にかわ質)で、コラーゲンもたっぷりというわけ。

 このゼリーはポークパイを焼いて冷ました後に、生地に開けた穴から注がれるもののようだ。
 ポークパイの作り方(レシピ)はこちらのサイト(video jug)から動画でご覧になれます(英語)。音が出ますのでご注意ください。

 この特別なパイ生地とゼリー層のおかげで、外はサクサク、中はしっとりとして、冷えた状態でも美味しく食べれるのだろう。
 

☆温めずに冷えたままどうぞ。
 冷えた状態でも美味しくと書いたが、ポークパイは実際に冷やして食べるものなのだ。

 日本人の感覚からすると、豚肉のミンチを小麦粉の生地で包んだ食べ物といえば、肉まん(豚まん)を彷彿してしまう。だから、ついオーブンや電子レンジなどで温めたくなってしまうかもしれない。
 
 しかし、それは止めたほうがよいように思う。せっかくのポークパイを台無しにしたくないので試したことがないのだが、ゼリー層もなくなり、こってりしたものに変わるかもしれない。

 後半では、ポークパイに関するうんちくをご紹介したい。お楽しみに。
 

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2007年11月15日 (木)

(し) ジャケットポテト JACKET POTATO

Jacket_potato_pub_lunch  イギリスの名物のフィッシュ&チップス。実際に食べてみて仰天する人も多いように思うが、ジャケットポテトもいろんな意味で負けていない。

 パブやカフェなどでも、サンドイッチや他のメニューとともに一品料理してリストに載っているが、その実態は、名前の通り、いも、イモ、芋。

 ローストされたドデカイ皮付きのジャガイモがメイン。間にシーチキンなどの具材が挟まっているだけのとてもシンプルな食べ物なのだ。
 

☆ソフトボール大のじゃがいも
Jacket_potato_potato  まず、じゃがいもの大きさが半端でない。日本のジャガイモの3~5個分。ソフトボールをさらに太らせたような大きさだ。こんなじゃがいも、どこで調達するのかと思ってしまうが、実際、イギリスの八百屋やスーパーの店頭には、ジャケットポテト用のドデカイじゃがいもが売られている。
 

☆上着(ジャケット)を着たじゃがいも
 そのでっかいじゃがいもをじっくりとローストさせる。皮付きのまま。
 ジャケットポテトという名前は、その皮をジャケット(上着)に見立てて、付けられたものだそうだ。
 コロッとした皮付きのジャガイモは、まるでマザーグースや不思議の国のアリスに登場するハンプティダンプティのように丸々と太った体にジャケットを羽織ったイギリス人に似ているような。

←ハンプティダンプティとアリスの時計(amazon uk)


☆じゃがいもの美味しさを味わって
 大体、一皿、5~10ポンド(約千~2千円)ほど。日本の感覚からするとべらぼうに高いようだが、概してイギリスの料理は高く、日本の2~3倍程するので、平均的なもののように思う。

 単なる焼いたジャガイモがどうして、と疑問に思われる人も多いかもしれない。しかし、ジャケットポテトが一品料理として君臨している理由がちゃんと幾つかあるように思う。
 まず、これ一つで満腹になること。そして、ジャガイモが美味しいこと。そして、中に挟み込む具を色々選ぶことができるからだろう。

 ジャガイモの大きさと中の具材の量からいって、普通の日本人が腹一杯になることは間違いない。
Jacket_potato_just_baked そして、じゃがいも好きでない人にはちょっと辛いかもしれないが、イギリスのじゃがいもは概して美味しく、このジャケットポテトも例外ではない。元々のホクホクした品種のうまさもさることながら、皮付きのまま、じっくりとローストされ、でんぷんのα(アルファ)化がゆっくりと起こって甘くなっているという感じがする。

 そして、形は常に一定だが、パスタのように、いや、それ以上に様々な具のバリエーションが存在する。
 

☆中の具は?
 代表的なものとしては、チーズ、カッテージチーズの他、サワークリームやクレームフレッシュといったチーズ・生クリーム類をハーブと混ぜたもの、ツナマヨ、チリコンカーン、コールスローなどだろう。

 ラタトゥイユやカレー、ベイクドビーンズ、季節の野菜やステーキ肉を挟んだりして食されることもあるようだ。まぁ、要はお好みでじゃがいもと合いそうなものを挟めばいいだけのようだ。 ジャケットポテトのレシピは、こちらの英国じゃがいも協会(British potato council)のサイトからご覧になれます(英語)。

 基本はじゃがいもだが、中の具を変えることによって、おやつ風にもおかず風にもなる。また、フィッシュ&チップスなどと違って、具材を工夫することで、低カロリーにしたり、じゃがいもの栄養価を補ったりすることが可能だそうだ。
 

☆学校給食にも最適?
 この手軽さと、多様性、栄養バランスが認められて、最近では学校給食に取り入れられたりしているようだ。英国じゃがいも協会(British potato council)では、ジャケットポテトバーというものを提案している。サラダバーよろしく、ジャケットポテトの中の具材をお好みで選ぶというものだ。

 それによると、上記に挙げたベイクドビーンズ、コールスローのほか、マッシュルーム・ストロガノフ(mushroom stroganoff)、カリフラワーチーズ(cauliflower cheese)、チキンティッカマサラ(chiken tikka masala)、コロネーションチキン(coronation chicken)、ランカシャー・ホットポット(Lancashire hot pot)など、イギリスらしい具材が続々と登場している。
 

☆家でも簡単に作れる??
 もちろん、パプやカフェ、給食だけでなく、ジャケットポテトは、一般家庭でも出される家庭料理でもある。

Jacket_potato_home_baking  我が家でも、一度作ってみたことがある。じゃがいもをローストして具材を挟み込むだけなのだから、手軽に作れると思って、安易に挑戦してみたのだ。

 確かに手間はかからなかった。じゃがいもを220℃のオーブンに放り込んで、その間に中の具材を適当に用意するだけ。最後に焼きあがったじゃがいもに切れ目を入れて、具材を挟み込めば終了だ。

 ただ、ローストに時間を要し、なんと焼くのに1時間半ほどかかってしまった。その間、まだかまだかと焼き具合を確かめる。手軽なようで案外面倒だなというのが正直な感想だ。
 

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2007年5月 3日 (木)

(へ) ベイクドビーンズ BAKED BEANS

☆イギリスの朝食に欠かせない豆
Baked_beans_breakfast  イギリスに来たことがある人なら一度は、食べたことがあると思われるのが、ベイクドビーンズだ。イングリッシュ・ブレックファスト(イギリス風朝食)には必須の料理。ホテルなどでは、必ずといっていいほど、目玉焼きやトーストとともに、これがたっぷりと出てくる。

 ベイクドビーンズ(baked beans、焼いた豆)と呼ばれているが、実際には、煮豆料理。塩気とともにほんのり甘いトマトソースで煮込まれている。トーストに乗せて食べることが多いようだ。

 日本人の中には大豆だと思っている人が案外多いようだが、使われているのは、ハリコット豆と呼ばれる白い豆。他の国では、アメリカ海軍でよく使われたことから、ネイビービーンズ(navy beans、直訳「海軍豆」)と呼ばれることもある。イギリスでは、ハリコット豆といえばベークドビーンズというぐらい、この料理の豆として普及している。
 

☆開けて温めるだけの缶詰商品
 朝から煮豆料理が出されるとは、イギリスの朝食もちゃんと支度されているんだなぁと思っていたが、一般家庭の場合は大抵、出来合いの缶詰を使っているようだ。イギリスには様々な既成料理の缶詰があるが、ベイクドビーンズはその代表格といえるかもしれない。
Baked_beans_tin_1

 スーパーでもベイクドビーンズの缶詰がいつも山積みになっており、皆、買っている。特に有名なのがハインツ(Heinz)の缶詰。この青緑色の缶がずらっと並んでいるのをよく見かける。

 あるTV番組を見ていたときのことだ。イギリス国外に住むイギリス人の生活が軽く紹介されていたが、戸棚を開けると山ほどのハインツのベークドビーンズの缶詰が。イギリスから来た司会者に「ここだけイギリスだなぁ!」と言われていた。

 日本でも、中に貴重品を入れることができる見せ掛けだけの広辞苑が発売されていたが、こちらイギリスでは、同様のベイクドビーンズのシークレット缶が売り出されていたりする。

←ベイクドビーンズのシークレット缶(amazon uk)
イギリス国内のみの発送のようです。

 缶詰ではないが、最近では、イギリスの俳優のヒューグラントが取材のカメラマンに腹を立て、玄関先で持っていたベイクドビーンズのパックを投げつけて逮捕された話が有名かもしれない。映像をご覧になりたい方は、こちらのDaily Mail社のサイトからどうぞ(英語)。
 

☆アメリカ生まれのイギリス育ち
 こんなにイギリスで普及しているベイクドビーンズだが、イギリス生まれではない。
 ベイクドビーンズの火付け役となったハインツ社(H. J. Heintz Company)は、1869年(明治2年)創業のアメリカの会社。

 ハインツ社によると、最初にイギリスでベイクドビーンズが販売されたのは、1901年(明治34年)のロンドン。日本でも紅茶で有名なフォートナム&メイソンが高級品として売り出したのが始まりのようだ。その後、1928年(昭和3年)になって、国内でもハインツのベイクドビーンズの生産が始まったのだとか。国内生産が始まってまだ70年も経っていない、イギリスの中では新しい物に分類される食品である。

 しかし、今では、イギリスの朝食を象徴するの一品とまでなっている。ハインツのベイクドビーンズの缶だけで、毎日150万個も製造されているそうだ。他のブランドやスーパーブランドのものまであることを考えると、どれだけの数になるのだろう。

 今では、砂糖不使用のものや、減塩減糖のもの、オーガニック製品のほか、BBQ味、カレー味、ポークソーセージ入りなど様々な種類のものが出されている。
 ハインツのベイクドビーンズについてもっと知りたい方は、こちらのハインツのサイトをご覧ください(英語)。過去のCMの動画などがご覧になれます。
 

☆イギリスを支えるベイクドビーンズ
 ベイクドビーンズがイギリスでこんなに普及しているのは、その保存性と栄養価、そしてびっくりするほどの安さのためだろう。

 まず、缶詰になっているので長期保存が可能である。そして、豆が主成分なので、低脂肪高エネルギー。ハインツによると、ハインツのベイクドビーンズ一缶あたり、一日の必要所要量の42%の繊維質、20%のマグネシウム、20%の鉄分が取れるそうだ。

 そして、低価格。1990年代の後半に、スーパーマーケット同士の価格戦線が勃発し、ベイクドビーンズの価格はどんどん値下がりしていったのだとか。中には、1人あたりの数量限定で一缶1ペニー(2円)で売り出したところもあったらしい。その後、価格は上方に軌道修正されたが、いまでもかなりの安価で販売されている。

 例えば、2007年(平成19年)4月現在、ハインツのベークドビーンズは、150g、200g、415gのものが、それぞれ0.3、0.4、0.45ポンド(約60円、80円、90円)で手に入る。スーパーブランドのものになると、50円を切るものもざらにある。

 栄養価も高く、腹持ちがいい。そして、調理が殆どいらず、安い。こんなわけだから、ベイクドビーンズは貧乏な学生や貧困層の人達の強い味方になっているようだ。
 

☆ひょっとして、日本人好みの味??
 実は、ここまで書いておいて言うのもなんだが、大豆煮もあんこもチリビーンズも甘納豆も大好きな自称豆好きにも拘らず、私はそれほどベイクドビーンズが好きではない。

 塩系の豆は料理、甘い豆はデザートという感覚なので、甘いトマトソース味のこの豆をどちらに位置づけしていいのかよくわからないのだ。料理として食べるには甘いし、デザートとして食べるにはおかずっぽい。ごくたまに、イギリス風朝食として出されるには悪くないのだが、それでも、ブラックプディングや目玉焼きほど積極的には食がすすまない。

 日本から母が遊びに来たときのこと。フィシュ&チップスを嫌々つまみ、私たちが日本風にアレンジしたイギリスの食材にもあまり箸が伸びなかった母。
 イギリス滞在最後の朝だからということで、イギリス風の朝食を恐る恐る出した。「あんまり美味しくないと思うけど、こっちの朝食にはこれが付き物だから。」と言い訳をブツブツ述べている私に対して、母は「案外、これ好きかも。」と言って、ベイクドビーンズをパクパク口に放り込んでいた。
 

ー最終更新日 21/Aug/2007ー

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2006年12月25日 (月)

(ろ) ローストターキー [七面鳥の丸焼き] ROAST TURKEY

☆イギリスのクリスマスのごちそうといえば・・・
 イギリスのクリスマスのメインと言えば、七面鳥の丸焼き、ローストターキーだろう。

 七面鳥の丸焼きと聞けば、アメリカの感謝祭のディナーを思い浮かべてしまうけれど、ここイギリスでは、誰がなんと言おうとクリスマスディナー(実際にはランチ)である。
 イギリス七面鳥情報センター(!)によると、ローストターキーをクリスマスの食卓の中心に据える家庭は9割を占め、ローストターキーがないとクリスマスじゃないという人は、87%もいるのだとか。ローストビーフやガチョウや鶏をローストする人も増えているように思うが、毎年約1千万羽の七面鳥がクリスマスで消費されているそうだ。

 実はまだ一度も食したことがなかったのだが、郷に入れば郷に従えということで、うちも初年度のクリスマスイブはローストターキーのディナーを楽しむことにした。
 

☆焼いたものが売ってない?!
 イギリスのスーパーでは、普段から丸ごとのローストチキン(鶏の丸焼き)が店頭に並んでいる。そして、この国では七面鳥(ターキー)は鶏肉(チキン)と並んでメジャーな鳥肉である。だからきっとローストターキーもあるに違いないと思い、最初は出来合いのローストターキーを購入しようと思っていた。

 クリスマスも押し迫った12月の22日頃、下見に行ったが、どこも売っていない。ローストターキー用の生の七面鳥が販売されているだけ。
 レシピを調べたところ、焼くのに時間がかかるもののそれほど難しくないようなので、生の七面鳥を買って家で焼くことにした。
 

☆選り取り見取りの生の七面鳥
Roastturkey_unpacked_1  生の七面鳥といっても、冷凍物、冷蔵物、サイズの大小が店頭に並んでいる。ローストチキンですら焼いたことのない私達には、どれがよいのかさっぱりわからない。

 冷凍物は5ポンド(約千円)程度で買え、割安なのだが、2日前から冷蔵庫でじっくり解凍させる必要がある。面倒なので、結局、冷蔵物の小さいものを購入することにした。11.15ポンド(約2千2百円)。小さいとはいいつつ3.4Kgなので、焼くのに3時間弱かかるよう。ちなみに、平均的なものは5.5Kgだそうだ。
 

☆焼く前の作業---ギブレットの処理とスタッフィング
 レシピによると、臓物(giblet)を取り除いて中をきれいにする作業と、中に詰め物(スタッフィング、stuffing)をする作業が必要らしい。なんだかんだと時間がかかりそうなので、前日の23日の間にこれらの作業をすることにした。

Roastturkey_without_giblets  恐る恐る七面鳥の腹を覘くと、中はきれいさっぱり臓物が取り除かれていた。さらに驚くべきことに、ビニルパックに入った少量の詰め物用の臓物(おそらくレバー)が中にあった。面倒な内臓の処理がいらないとは大変気が利いている。しかし、臓物がそのままのものもあるそうなので、買うときには要注意だ。

 中に詰める詰め物(スタッフィング)は、この臓物、玉ねぎ1個、セロリ4本、にんじん1本、リンゴ1個をみじん切りにしてよく炒め、塩コショウ、タイム、ローリエを加えて、1個とパン粉1カップと混ぜ合わせたものである。
 私達は、自分で用意したが、スタッフィングや、スタッフィング用の粉が常時店頭に並んでいるので、これを利用するのも手かもしれない。スタッフィングが既につまった七面鳥も市販されているそうである。
 詰め終わった七面鳥はイブに備えて冷蔵庫で一晩お休みとなった。
 

☆七面鳥の焼き方---我が家の場合
Roastturkey_before  翌日、七面鳥をホイルで包み、170度のオーブンに入れた。イギリスではクリスマス前になると、通常の幅の倍ほどあるローストターキー用ホイルが売られる。分厚くすっぽり包めるため、肉汁が漏れることがなく、なかなか便利である。

 焼くこと3時間、七面鳥を取り出し、竹串をさしてチェックする。ホイルに溜まった肉汁を上からかけ、付け合せのパースニップとじゃがいもを七面鳥の脇において、いっしょにロースト15分。その後、ホイルをもう一度きっちり巻いた状態で蒸らすこと30分。通常ならこれで終了なのだが、なんとなく生っぽいところがあったので、うちはさらに1時間ローストした。 
 

☆お味は?---冷めてから味わうがよし?
Roastturkey_after  計1晩+4時間45分。焼き色がついていないので、多少不安があったのも事実だ。しかし、これだけ時間がかかったのだから美味しいに違いないと期待して食卓についた。
 一口食べて、「えっ?」。二口目も、「・・・」。 胸肉辺りはぱさぱさしており、モモ肉あたりは七面鳥のにおいがきつく、あまり美味しくなかったのだ。
 詰め物に香草をふんだんに入れたにも拘らず、肉に香りが全然移っていない。普段よく作っている鶏の手羽先焼きのほうがはっきり言って断然おいしい。私達の作り方が拙かったのだろうか。
 結局すぐに嫌になって食べるのをやめてしまった。「来年からはローストチキンを買って来ようね。」と連合いと何度も確認しあった。

 しかし、数時間経って、空腹に耐え切れず、すっかり冷めてしまったローストターキーを仕方なく口に放り込んだ。「ん?!おいしい!」。冷めて七面鳥のくさみが抑えられ、肉もひきしまり、香草の香りがほのかにする。そういえば、ローストビーフにしても冷えたものを味わう料理だった。ひょっとするとローストターキーもある程度冷まして食べるものなのだろうか。
 

 いくら美味しくなったとはいえ、骨込みだが3.4Kgの肉を消費できるはずもなく、殆どがフリーザーバッグに詰められ、翌日からの肉源となった。

Roast_turkey_chicken 換気扇をつけてもいつまでも漂った七面鳥の臭いにもやられたのか、連合いは当分ローストターキーは見たくないと言い放ち、手間隙かけて作ったローストターキーは、濃く味付けした煮物などの和風の料理の中で存在を主張することなく、ひっそりと食べられていった。

 (補足)クリスマス用の七面鳥を上手に焼きたい方は、こちらのBBCのガイドもご参照ください(英語)。おいしそうなローストターキーの写真もご覧になれます。
 

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2006年10月19日 (木)

(ふ) ブラックプディング BLACK PUDDING

☆黒いチューブがプディング??
Blackpudding_package  いつも見ているテレビのリアリティ番組で、参加者の一人が、「ある物」を要求して手に入れているシーンがあった。手には、真っ黒な、太くて短いビニルチューブのようなものが。黒い風船細工の一部のようにも見える。
 確か、その人は、「ブラック・プディング(black pudding)」を要求していたはず。黒いという点は合っているのだが、どこから見ても、プディングには見えない。聞き間違えかと思ったが、そうではなかった。
 

☆欧米ではメジャーな最古のソーセージ
 ブラックプディングは、イギリスの朝食メニューに出てくる有名なソーセージの一つである。
 イギリスだけでなく、欧米の多くの国で食されている。古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』にも登場することから、紀元前からある最古のソーセージだとも言われている。

 イギリスでは、イングランド北西のランカシャー(Lancashire)州が、ブラックプディングの中心地だと言われている。
 特に、州都のプレストン(Preston)やベリー(Bury、現在はマンチェスター州)のブラックプディングは有名だそうで、ベリー近隣の村では、「世界ブラックプディング投げコンテスト(The World Black Pudding throwing Competition) 」なるものが毎年開かれているそうだ。これは、パブの外壁の台に置かれたヨークシャープディング(Yorkshire pudding)に向かって、ブラックプディングを投げ、ヨークシャープディングを数多く打ち落とした人が勝ちというもの。詳しくはこちらのBBCのニュースをご覧ください(英語)。
 このコンテストは、ヨークシャー州に対するランカシャー州のライバル心に基づいているとか、15世紀半ばに起った、イングランド王家のランカスタ家とヨーク家による権力闘争である薔薇戦争に基づいているとか言われている。
 

☆血のソーセージ
Blackpudding_before  ブラックプディングは、国によっては、ブラック・ソーセージ(black sausage、黒ソーセージ)と呼ばれている。そして、またの名をブラッド・ソーセージ(blood sausage、血のソーセージ)。

 そう、ブラックプディングは、豚や牛の血を固めて作ったソーセージなのである。イギリスのブラックプディングの場合、豚の血のものが一般的で、その他、豚の脂肪、ラスク、ハーブなどが入っている。
 

☆焦げたわけではありません
Blackpudding_after  レストランなどの朝食で出されるばかりでなく、市販品も流通している。市販品は、黒いビニルチューブに入って売られていることが多い。私がテレビで見たものも、そんな市販品の1つというわけ。

 ブラックと名が付くだけあって、パッケージだけでなく中身も黒い。いや、正確に言うと、開封時は、ちょっと色の濃いソーセージという感じなのだが、オーブンやフライパンなどで数分焼いて加熱すると、まるで焦げてしまったような真っ黒な色になる。おそらく、これは血に含まれる鉄分のせいで、焦げて栄養価を損なってしまったわけではないので、安心して食べれる食品である。

 
☆言われなければ、気付かない?
 血のソーセージなんて、気味悪いと思われる方もおられるかもしれないが、見た目も、血を連想させることは全くないし、味も、ハーブが効いているためか、血生臭さは殆ど感じられないように思う。教えられなければ、殆どの人は気付かないように思う。食感は、普通のソーセージとコンビーフの中間といった感じ。
 
 血を見るのがダメ、話を聞くのもダメなうちの連れ合いは、血のソーセージと聞いて、最初は、なかなか箸を付けようとはしなかった。そのうち、恐る恐る食べ始め、いつの間にか、普通においしそうにパクパク食べていた。
 

☆鉄分補給にもどうぞ
Blackpudding_dish  ブラックプディングは、血が入っているだけあって、鉄分が豊富で、貧血予防に効果的だ。実際、こちらでは、貧血防止の食べ物として、レバー、キドニーに並んで、ブラックプディングが挙げられていることが多い。
 レバーの味や下ごしらえが苦手な人は、ブラックプディングを試してみるのも一つの手かもしれない。
 

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