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2007年11月 5日 (月)

(う) ウスターソース WORCESTERSHIRE SAUCE

☆マーマイトに並ぶイギリス名産とは?
 知人に付き添って、本屋の料理本コーナーに行った。イギリスの料理人の本や各国のレシピ本の中で目をひいたのが、あるイギリス名産品(?)の本のコーナー。マーマイトの本などが並んでいた。

 マーマイトの本の隣には、何やらソースの本が。”Worcestershire sauce”と書いてある。
 「ウォーチェスターシャー・ソース??」
 知人に訊いてみると、イギリスの有名なソースだという。実はこれ、ウスターソース。

←この本です。(Amazon uk)
 日本への発送も可能のようです。

 そう、日本でもお馴染み、野菜や果物ベースの黒いさらっとしたソース。今では、とんかつソースやお好み焼きソースに追いやられているものの、少なくとも昔は、「ソース」といえば、ウスターソースのことだった。
 

☆これがウスターソース??
Worcestershire_sauce_which  正直に言うと、私はあまりウスターソースが好きではなかった。苦手とまではいかなかったものの、醤油や他の濃厚なソース、マヨネーズ、ドレッシングがあれば、迷わずそちらをかけていた。日本の自宅でもわざわざウスターソースを購入することもなく、気がつけばイギリス。もう何年もウスターソースを口にしていなかった。
 しかし、本を眺めているうちに、久しぶりに使ってみたくなった。そして、気付いた時には、スーパーのソースコーナーで本場のウスターソースを探していた。

 イギリスのウスターソースと言えば、リー&ペリン(Lea and Perrins)のものだろう。冒頭のウスターソースの本の表紙もしっかりと、リー&ペリンのソースが載っている。
 酢やその他のソースに比べると小振りのガラス瓶で、オレンジ色のラベルがレトロな感じ。150ml入りで1ポンドほど(約200円)だった。

 

←日本でも入手できるようですね。(明治屋、楽天市場)

 家に帰って、試しに舐めてみた。見た目は、日本のウスターソースよりも、さらっとした液体。どちらかというと、薄口しょうゆや黒いのような感じ。そして、味も、日本のウスターソースに比べて、さっぱりしており、甘くなく、ピリッとスパイシーな感じ。そして、独特のコクがある。

 日本のウスターソースを長年味わっていなかった私でも、その違いは歴然で、似て非なるもののように感じた。
 

☆日英のウスターソースの違い
Worcestershire_sauce_comparison_2  実際、日本のウスターソースとイギリスのウスターソースは、かなり異なるもののようだ。

 日本のウスターソースの場合、リンゴ、トマト、にんじん、玉ねぎなどの果物や野菜の絞り汁に、砂糖、塩、、香辛料が加えられたものが基本のようだ。酢も米酢やリンゴ酢などが使われていることが多いようだ。

 それに対して、イギリスのウスターソースの原材料は、モルトビネガー(麦芽酢)、スピリットビネガー、モラセス、砂糖、塩、アンチョビの魚醤、タマリンド抽出物、玉ねぎ、ニンニク、香辛料、香料。

 最大の違いは、イギリスのものは、果実や緑黄色野菜を全く使っていないということ。そして、アンチョビとタマリンドが入っているということだろう。

 アンチョビは、ご存知のとおり、カタクチイワシの仲間で塩漬けにされ熟成発酵されたもの。日本でもイタリア料理とともに広まった、塩気と独特の芳香が特有の魚ペーストだ。

 タマリンドは、熱帯原産のマメ科の植物で、果実に酸味があり、インド、タイ、ベトナム料理などで酸味料としてよく用いられるものだそうだ。魚の臭みを和らげる効果もあるのだとか。

 そして、酢や砂糖の違いも見逃せない。モルトビネガーは麦芽大麦を使った酢で、ほんのりクセがある。また、モラセスは黒砂糖・黒蜜の味がする糖蜜。

 一言で、日英のウスターの違いを言い表すと、日本のはフルーティー、イギリスのは大人の味という感じになるだろうか。
 

☆ウスターソースの誕生秘話
 同じウスターソースなのに、こんなに違うのはどういうわけか。その歴史を紐解いてみた。

 イギリスのウスターソースの発祥はとても古く、今から150~200年近く昔にさかのぼる。
  リーアンドペリンのサイトによると、1800年代の初期、当時、イギリスの植民地だったインドのベンガル地方*から帰って来たイギリスの貴族、サンディズ卿が、レシピを持ち帰り、二人の薬剤師に命じて作らせたのがウスターソース(Worcestershire sauce)の始まりだそうだ。
*現在では、インドとバングラディシュに分断されている。

 レシピ通りに材料を調合したものの、全く美味しくない。失敗したと思った薬剤師達は、樽にいれたまま放置してしまった。数年が経ち、廃棄する前にちょっと舐めてみたところ、驚くほど美味しいソースに変わっていた。
 瓶詰めして売り出すと、宣伝もしていないのに驚くほど売れ、たちまちイギリス中の家庭に常備されるほどになったというわけだそうだ。

 その時の薬剤師二人の名前が、ジョン・リー(John Lea)とウィリアム・ペリン(Willliam Perrin)。そして、イギリスの”Worcestershire”地方で作られたソースだから、リー&ペリンのウスターソース(Lea and Perrins Worcestershire sauce)という名になったそうだ。
 今ではイギリスだけでなく、世界中で使われているそうだ。
 リー&ペリン社のサイトはこちら(英語)。ウスターソースの話の絵本やCMをご覧になれます。

 
☆イギリスで生まれ日本で育ったソース
 その著名なウスターソースが日本にやってきたのは、江戸時代末期。明治時代に広まったと言われている。しかし、スパイシーなこのソースは当時の日本の食事に合わず、次第にマイルドな現在のソースに改良されていったのだとか。

 そのうち、とんかつソース、お好み焼きソースなどといった、日本のウスターソースをさらに甘くしてとろみをつけ改良したソースが作られるようになったようだ。

 異国の地の日本で、形状も味も全く違うものにまで進化を遂げたイギリスのソース。
 今では、オリジナルを知っている日本人はごく少数なのかもしれない。
 

☆イギリスのウスターソースの使い方
 では、イギリスのウスターソースは、時代遅れで使い道のない不味いソースなのかというと、そうではないように思う。
 日本のソースでは代用できない、イギリスのウスターソースならではの使い方があるようだ。

・フライや脂っこい料理に
Worcestershire_sauce_scotch_egg  まず、濃厚なソースではなく、酢を主体としたものなので、揚げ物や脂っこいものとよく合うように思う。
 リー&ペリン社のCMでは、フィッシュ&チップスでお馴染み、チップス(フライドポテト)にかけて食べる例が紹介されていた。

 我が家では、連合いの提案で、スコッチエッグにかけて食べてみたが、これは大正解。淡白なスコッチエッグにウスターソースの独特のスパイスが効き、脂っこさもさっぱりして、とても美味しくなった。
 また、特に魚などの洋風の揚げ物やステーキなどにも合いそうだ。
 
・カレーの隠し味に
 また、ピリッとスパイシーでコクがあるので、カレーやシチューの隠し味として使っても美味しいようだ。
 CMでは、肉料理にかけるグレイビーソースの隠し味に使われていた。

・カクテルに
 そして、意外な用途がカクテルのスパイスとして。トマトジュースをウォッカで割ったカクテル、ブラッディ・マリー。このカクテルにウスターソースを数滴入れると、コクが出て美味しくなると言われている。

 これは、1921年、フランス、パリのバーテンダーが始めたのだと言われている。また、メキシコのビールを使ったカクテル、ミチェラーダ(Michelada)にも、ウスターソースが欠かせないようだ。
 今でも日本のバーなどでも、リー&ペリンのウスターソースが置かれていたりするようだ。

 他のソースに押しやられているとはいえ、リー&ペリンのウスターソースは、日本でも時々市販されているようだ。野菜ベースのソースが普及した現在の日本では、却って新鮮で、新しい使い道が生まれるかもしれない。その際は、是非ご一報ください。

 
☆「ウスター」はどこから?
 ところで、日本語の「ウスター」という言葉はどこからきたのだろうか。

 昔、牡蠣油のオイスターソースの味を知らなかった頃、オイスターソース(oyster sauce)とウスターソースは同じものだと思っていた私。てっきり、「オイスター」というのが訛って「ウスター」になったのだと信じていた。

 ウスターの歴史を知った今、「『ウォーチェスターシャー(Worcestershire)』というのが訛って『ウスター』になったのか。」と思い、イギリスの友人に向かって得意顔でこう言った。
 「日本では、ウスターソースって呼ばれてるんだよ。」

 友人は、少しはにかみながら、イギリスでもほぼ同じように呼ばれているのだと教えてくれた。
 そう、”Worcestershire”の発音は、「ウ(ー)スター・シャー」。
 これからは舌を噛まなくて済みそうだ。
 

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コメント

ウスターソース、違うんですね!
(クイズは当たりました!)

私も家にあるウスターソースはあまり好きではないです。
祖父がキャベツやサラダにもウスターソースをかけていたのを覚えていますが。。

我が家ではとんかつを食べるとき、母はしょうゆ、私はケチャップ、父はウスターソース。

ウスターソースを使うのは父がほとんどですが、お好み焼きソースには全員入れます。
我が家のお好み焼きソースはケチャップ、マヨネーズ、ウスターソースをあらかじめ
均一に混ぜる、一見おいしくないものなのですがこれが結構おいしいです。
ウスターソースを入れないと物足りない。

イギリスのものではどうかわかりませんが一度試してみてください!

ところでオイスターソースは中華料理に使うやつですよね?

投稿: ぱんちゃん | 2007年11月 5日 (月) 20時16分

ぱんちゃん、コメントありがとうございます。
(クイズ正解、おめでとうございます!)

オイスターソースはおっしゃるとおり、中華に使われるもので、
イギリスのスーパーでも見かけますよ。

ソースのレシピ、ありがとうございます。
実は、恥ずかしながら、うちはイギリスでも、とんかつソースも
お好み焼きソースも、日本の市販のものを使っています。。
これらはオリエンタル食材店で売られているんですが、
ありがたいことに、なぜかいつも現地の人から使いさしを
もらうんですよw(恵んでもらっているのかもしれませんw)

でも今度は、教えていただいたお好み焼きソースも自作して
試してみたいと思います。イギリスのオイスターソースを入れて。

ちなみに、なぜか日本の市販のウスターソースだけは
もらったことがありません。。

投稿: ろっきぃ(管理人) | 2007年11月 7日 (水) 19時14分

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