(へ) ベイクドビーンズ BAKED BEANS
☆イギリスの朝食に欠かせない豆
イギリスに来たことがある人なら一度は、食べたことがあると思われるのが、ベイクドビーンズだ。イングリッシュ・ブレックファスト(イギリス風朝食)には必須の料理。ホテルなどでは、必ずといっていいほど、目玉焼きやトーストとともに、これがたっぷりと出てくる。
ベイクドビーンズ(baked beans、焼いた豆)と呼ばれているが、実際には、煮豆料理。塩気とともにほんのり甘いトマトソースで煮込まれている。トーストに乗せて食べることが多いようだ。
日本人の中には大豆だと思っている人が案外多いようだが、使われているのは、ハリコット豆と呼ばれる白い豆。他の国では、アメリカ海軍でよく使われたことから、ネイビービーンズ(navy beans、直訳「海軍豆」)と呼ばれることもある。イギリスでは、ハリコット豆といえばベークドビーンズというぐらい、この料理の豆として普及している。
☆開けて温めるだけの缶詰商品
朝から煮豆料理が出されるとは、イギリスの朝食もちゃんと支度されているんだなぁと思っていたが、一般家庭の場合は大抵、出来合いの缶詰を使っているようだ。イギリスには様々な既成料理の缶詰があるが、ベイクドビーンズはその代表格といえるかもしれない。
スーパーでもベイクドビーンズの缶詰がいつも山積みになっており、皆、買っている。特に有名なのがハインツ(Heinz)の缶詰。この青緑色の缶がずらっと並んでいるのをよく見かける。
あるTV番組を見ていたときのことだ。イギリス国外に住むイギリス人の生活が軽く紹介されていたが、戸棚を開けると山ほどのハインツのベークドビーンズの缶詰が。イギリスから来た司会者に「ここだけイギリスだなぁ!」と言われていた。
日本でも、中に貴重品を入れることができる見せ掛けだけの広辞苑が発売されていたが、こちらイギリスでは、同様のベイクドビーンズのシークレット缶が売り出されていたりする。
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←ベイクドビーンズのシークレット缶(amazon uk) イギリス国内のみの発送のようです。 |
缶詰ではないが、最近では、イギリスの俳優のヒューグラントが取材のカメラマンに腹を立て、玄関先で持っていたベイクドビーンズのパックを投げつけて逮捕された話が有名かもしれない。映像をご覧になりたい方は、こちらのDaily Mail社のサイトからどうぞ(英語)。
☆アメリカ生まれのイギリス育ち
こんなにイギリスで普及しているベイクドビーンズだが、イギリス生まれではない。
ベイクドビーンズの火付け役となったハインツ社(H. J. Heintz Company)は、1869年(明治2年)創業のアメリカの会社。
ハインツ社によると、最初にイギリスでベイクドビーンズが販売されたのは、1901年(明治34年)のロンドン。日本でも紅茶で有名なフォートナム&メイソンが高級品として売り出したのが始まりのようだ。その後、1928年(昭和3年)になって、国内でもハインツのベイクドビーンズの生産が始まったのだとか。国内生産が始まってまだ70年も経っていない、イギリスの中では新しい物に分類される食品である。
しかし、今では、イギリスの朝食を象徴するの一品とまでなっている。ハインツのベイクドビーンズの缶だけで、毎日150万個も製造されているそうだ。他のブランドやスーパーブランドのものまであることを考えると、どれだけの数になるのだろう。
今では、砂糖不使用のものや、減塩減糖のもの、オーガニック製品のほか、BBQ味、カレー味、ポークソーセージ入りなど様々な種類のものが出されている。
ハインツのベイクドビーンズについてもっと知りたい方は、こちらのハインツのサイトをご覧ください(英語)。過去のCMの動画などがご覧になれます。
☆イギリスを支えるベイクドビーンズ
ベイクドビーンズがイギリスでこんなに普及しているのは、その保存性と栄養価、そしてびっくりするほどの安さのためだろう。
まず、缶詰になっているので長期保存が可能である。そして、豆が主成分なので、低脂肪高エネルギー。ハインツによると、ハインツのベイクドビーンズ一缶あたり、一日の必要所要量の42%の繊維質、20%のマグネシウム、20%の鉄分が取れるそうだ。
そして、低価格。1990年代の後半に、スーパーマーケット同士の価格戦線が勃発し、ベイクドビーンズの価格はどんどん値下がりしていったのだとか。中には、1人あたりの数量限定で一缶1ペニー(2円)で売り出したところもあったらしい。その後、価格は上方に軌道修正されたが、いまでもかなりの安価で販売されている。
例えば、2007年(平成19年)4月現在、ハインツのベークドビーンズは、150g、200g、415gのものが、それぞれ0.3、0.4、0.45ポンド(約60円、80円、90円)で手に入る。スーパーブランドのものになると、50円を切るものもざらにある。
栄養価も高く、腹持ちがいい。そして、調理が殆どいらず、安い。こんなわけだから、ベイクドビーンズは貧乏な学生や貧困層の人達の強い味方になっているようだ。
☆ひょっとして、日本人好みの味??
実は、ここまで書いておいて言うのもなんだが、大豆煮もあんこもチリビーンズも甘納豆も大好きな自称豆好きにも拘らず、私はそれほどベイクドビーンズが好きではない。
塩系の豆は料理、甘い豆はデザートという感覚なので、甘いトマトソース味のこの豆をどちらに位置づけしていいのかよくわからないのだ。料理として食べるには甘いし、デザートとして食べるにはおかずっぽい。ごくたまに、イギリス風朝食として出されるには悪くないのだが、それでも、ブラックプディングや目玉焼きほど積極的には食がすすまない。
日本から母が遊びに来たときのこと。フィシュ&チップスを嫌々つまみ、私たちが日本風にアレンジしたイギリスの食材にもあまり箸が伸びなかった母。
イギリス滞在最後の朝だからということで、イギリス風の朝食を恐る恐る出した。「あんまり美味しくないと思うけど、こっちの朝食にはこれが付き物だから。」と言い訳をブツブツ述べている私に対して、母は「案外、これ好きかも。」と言って、ベイクドビーンズをパクパク口に放り込んでいた。
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26/Oct




コメント
フォートナム&メイソンが高級品として。
っていうのが意外です。
フォートナムの紅茶をいただいたりしたら、
すごくありがたがって飲んでいます。
それが超安値のハインツの製品になったんですね。
ハインツ、ホワイトソースやグラタンソースはよく使いますが、
日本ではベイクドビーンズは見かけないですね。
おまめは美容にも、健康にもよさそうだし、みかけたら
是非たべてみたいです。
納豆嫌いの私には結構あうかも!
投稿: ぱんちゃん | 2007年5月 4日 (金) 21時08分
ぱんちゃん、コメントありがとうございます。
知人の日本食通のフランス人は、
イギリスの食べ物は概して苦手なのですが、
ベイクドビーンズだけは唯一好物だと言っていました。
私の周りでは、納豆とベイクドビーンズの好き嫌いは
相反しているようです。
一般的にいえるかどうかは全くもって疑問ですが(笑)、
納豆がお嫌いならひょっとしてお口に合うかもしれませんね。
投稿: ろっきぃ(管理人) | 2007年5月 5日 (土) 19時05分