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2007年2月15日 (木)

(し) 芝生 LAWN

☆芝生にお入りください。
 「芝生に入らないでください」、「芝生に入るべからず」、”KEEP OFF THE GRASS”。
 日本の観光地や公園などで、こういった芝生内立ち入り禁止の札をよく目にした。美しく生え揃った芝生に足を踏み入れたい誘惑とよく闘ったものだ。

Lawn_football  イギリスには、至るところに芝生が植えられている。公園や広場も、そして道路わきやラウンドアバウトも芝生で埋め尽くされている。
 渡英直後、「こんなに芝生だらけでは誘惑に負けてしまうのでは?」と思う間もなく、芝生でくつろぐ人々の姿が目に入った。普通に通行する人、寝転がる人、サッカーやバトミントンなどの競技を楽しむ人。皆、人目をはばかっている様子は全くない。
 イギリスでは、芝生は、外から観賞するためでなく、中でくつろぐために存在しているのである。
 

☆一年中青々している理由は?
Lawn_square  人々に踏みつけられているのにも拘らず、そして、芝刈り以外の手入れをしているのを殆ど見かけないにも拘らず、一年中、どこでも、青々とした芝生を楽しむことができる。

 日本では、品種改良によって育てやすいものが流通しつつあるものの、まだまだ芝生は「維持するのが大変」なしろものだ。ゴルフ場のような美しい緑を確保するためには大量の農薬が必要だし、猛暑や冬に枯れてしまっている芝生も多く見かける。

 どうして、イギリスの芝生は一年中こんなに青々として美しいのだろうか。それは、イギリスの土壌、イギリスの気候に適した寒地型の芝生が植えられているからだ。
 

☆日本の暖地型とイギリスの寒地型
 芝生にも様々な種類があるが、その特性から大きく2種類に分類することができる。暖地型(夏型、warm season grasses)と寒地型(冬型、cool season grasses)である。

 暖地型は、もともと熱帯から温帯にかけて生えていた芝生で、高温多湿に耐えることができるが、寒さに弱い。日本で昔から植えられてきた芝生であるノシバ、コウライシバなどはこの暖地型に分類される。夏は生き生きとしているものの、冬には生育が止まり、休眠して枯れたようになってしまったり、中には枯れてしまうものもある。
 また、芝生に入った数少ない記憶をたどってみると、フサフサの芝生を想像して足を踏み入れたものの、チクチク痛くて心地よくなかったように思う。これは、ノシバの葉の特徴のようだ。

Lawn_frosted  一方、寒地型は、もともと亜寒帯から温帯にかけて生えていた芝生で、寒さに強く、冬でも緑を保つことができる。日本で「西洋芝」と呼ばれているものは、この寒地型のことを指すことが多いようだ。イギリスの芝生も寒地型。
 寒地型には、寒さに強いが手間がかかるベントグラス(Bent grass)、生育が早いが踏付けや暑さに弱いライグラス(Rye grass)、寒さに弱いが生長が遅いブルーグラス(Blue grass)、踏付けや日陰に強いが葉が硬くまばらになりがちなフェスク(Fescue)などの様々な種類がある。
 

☆用途別の芝生?
Lawn_cow  これらの芝生は、イギリスでは、予算や、かけれる手間、日当たり、用途によって、使い分けられているようだ。

 特に、チューイングス・フェスク(Chewings fescue)、クリーピング・レッド・フェスク(creeping red fescues)、ペレニアル・ライグラス(Perennial ryegrass、ホソムギ)、ブラウン・トップ・ベント(brown top bent)と呼ばれるベントグラスが使い分けられることが多いようだ。

 例えば、サッカーやウィンブルドンテニスの芝生は、生長の早いペレニアル・ライグラスと色鮮やかなクリーピング・レッド・フェスクが7:3の割合。また、ゴルフ場のティーグラウンドなどは、短く刈り込んでも枯れにくいブラウン・トップ・ベントが中心。

 そして、公園や庭などでは色鮮やかなクリーピング・レッド・フェスクが中心に使われているそうだ。チューイング・フェスクも刈り込みに強いことからゴルフ同様にクリケットやテニスコートに使われることも多い。
 

☆日本では寒地型は無理?
 日本でも、これらの寒地型が導入されたが、なかなかうまくいかなかったようだ。
 寒地型は皆、暑さに弱いという欠点を持つため、高温多湿の日本の夏では枯れやすい。イギリスでも気温が高くなれば弱ってしまうことがある。2006年7月のイギリスは例年にない猛暑で、ロンドン南部は90年ぶりに最高気温36.3℃を更新したが、ロンドンだけでなくあちこちの芝生が枯れかけているのを見かけた。

 また、寒地型は、生育が早いため頻繁に芝刈りをする必要があり、高温多湿な日本の気候の下では病害にかかりやすいため、農薬を撒かないと維持できなかったりする。酸性に弱いベントグラスを火山が多く降雨量が多いため酸性に傾いた日本の土壌で維持するためには、土壌を中和する必要がある。イギリスで行われているような簡単な手入れでは、草がボウボウの状態か、枯れた状態になるのが関の山だ。

 また、なぜだかよくわからないのだが、イギリスの土壌は概して水はけがいいように思う。芝生の維持には、適度な水はけを必要とするので、梅雨の多い日本には、難しいことも多い。

 寒冷な気候、アルカリ土壌、そしておそらく水はけのよさなど、これらのイギリスの風土に適した芝生は、簡単に維持できるからこそ、簡単にくつろぎの場となりうるのかもしれない。
 

☆隣の芝は本当に青い?
Lawn_mower ここまで読んで、イギリスの芝生はうらやましいなぁと感じてしまった人がおられたら、作者の思う壺だ。
 なぜなら、「隣の芝は青い」という諺を持ち出すことができるから。現地では”The grass is always greener on the other side of the fence.(柵の向こうの芝はより緑色をしている)”といわれている。柵というのは、おそらく、イギリスの庭を隔てる柵のことだろう。

 「隣の芝は青い」とは、実際はそうでもないのだけれど、他人のものはよく見えるという意味の諺だが、まさにそのとおり。

 芝生が原因の花粉症(hay fever)もイギリスで多く流行っているし、芝生の庭がある家は定期的に芝刈りをしないといけない。我が家は共同住宅で共通の庭なので、専用の人が芝刈りをしてくれるのだが、1ヶ月に1回は、オートバイを近くで走らせたような音が1時間以上鳴り響く。自分でやるならなお大変。掃除機より一回り大きい芝刈り機をわざわざ購入しないといけない場合も多い。

Lawn_green  日本の四季はそれぞれ色が違って美しい。秋も冬も緑の芝生が生い茂っていては、春や夏のありがたみが半減するような気がする。冬を枯れ葉色に彩る暖地型の芝生は、日本の風土や情景に合っていて、なかなかいいような気がするのだが、私だけだろうか。
 

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コメント

うちは暖地型の芝生があったはずですが
柴犬のフクちゃんが掘りまくっていつの間にか
GardenがYardになってしまいました。

やはり芝生の手入れは芝刈りが重要ですが
これは結構面倒くさい。

しかもオオバコなど根強い雑草を手作業で抜いてから
やっと芝刈り。

そんなこんなでうちの芝生はいつの間にか衰退してしまいました。

芝生でごろごろ、を楽しんだのは京都の植物園だったかな。

イギリスでは寒いのに上半身はだかで芝生で日光浴をしている人をよくみかけました。
やはり日光、浴びないとビタミン不足になるんでしょうね。

イングリッシュガーデンでくつろぎたいです、、、

投稿: ぱんちゃん | 2007年2月15日 (木) 22時14分

ぱんちゃん、コメントありがとうございます。

わんちゃんにとって、土堀りはお仕事ですからね~w
うちもよく掘りかえされました。
こちらでは、芝生の広場で犬を散歩させている人も多く見かけますが、
だだっ広いためか、犬のしつけが行き届いているためか、
ダメージは殆どないようです。

芝刈りも、機械任せで、一つ一つ抜いているのを見たことがありません。
そのため、たまにタンポポなどの小さい花が咲いていたりしますw

うちの公共庭も、周りの建物から見下ろされているにも拘らず、
芝生でのんびり日向ぼっこしている人をよく見かけます。
さすがに、今は寒いので、上半身裸で寝転がっている人はいませんがw

ガーデン(庭)については、またご紹介しますので、ご期待(?)ください。

投稿: ろっきぃ(管理人) | 2007年2月16日 (金) 04時51分

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