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2007年1月 1日 (月)

(お) 横断歩道 PEDESTRIAN CROSSING

 イギリスでのドライブはとても快適だ。道幅は日本より広いし、景色もきれいだし、信号にも殆ど引っかからない。
 信号に引っかからないのは、交差点がラウンドアバウトであるおかげが大きいが、それだけではない。横断歩道にも工夫がされているからである。
 

☆動物の名前の横断信号
 日本では、「横断歩道」という呼び名しかないが、こちらでは、その機能別に横断歩道の呼び名が違っている。それもおかしなことにどれも動物の名前が付いている。よく見かけるのは、ゼブラ(シマウマ)、ペリカン、パフィン(ツノメドリ)、ツーカン(オオハシ)だろうか。ペガサスというものや、過去にはパンダというものもあった。
 

☆信号のないシマウマ横断歩道
Pedestrian_crossing_zebra  一番シンプルなものは、ゼブラ・クロッシング(zebra crossing、シマウマ横断歩道)というもの。私は、横断歩道の英訳はこれだとずっと思っていたが、ちょっと違うようだ。

 ゼブラ・クロシングとは、信号機のない横断歩道のこと。イギリスでは 1951年(昭和26年)に導入されて、横断歩道の縞模様から名前が付けられた。

 ゼブラ・クロッシングの殆どには、ベリーシャ交通標識(Belisha beacon)という、白黒の縞のポールの上に大きなオレンジ色の玉がついた、歩行者優先の標識が建っている。この標識の先についている玉は、運転者に注意を促すためのもの。夜間にはチカチカ点滅する。

 日本でも、信号のない横断歩道は歩行者優先となっているが、実際は、悲しいことに、歩行者が横断歩道脇の縁石にいても、止まるは極めて少ないように思う。しかし、こちらのゼブラ・クロッシングは、ベリーシャ交通標識が派手で目立ちやすいためか、取締りが厳しいためか、歩行者優先がかなり守られているように思う。

 ゼブラ・クロッシングを導入した当時は、2百万台の車がイギリスに登録されていたそうだが、十年後の1961年(昭和36年)には、1千万台を超してしまったそうだ。そして、事故率を減らすために、翌年の1962年(昭和37年)、パンダ・クロッシングが導入されることになる。
 

☆今はなきパンダ横断歩道
Pedestrian_crossing_panda  パンダ・クロッシング(panda crossing)なんて、ちょっと笑ってしまう名前だが、今の押しボタン式信号の前身ともいえるようなもの。もちろん、現物は見たことがないのだが、当時の映像や資料を元に説明したいと思う。

 ゼブラ・クロッシングと差別化をはかるためか、図のように、三角形が並んだ横断歩道の模様が採用された。信号は、自動車用の黄色の点滅信号と赤信号と、歩行者用の「横断中」と書かれた信号の3つが組み合わされている。

 パンダ・クロッシングの信号の仕組みはややこしい。なんと、通常はどの信号も消えている。歩行者が押しボタンを押すと、自動車用の黄色信号が点滅し、赤に変わる。同時に、歩行者用の「横断中」信号が点灯する。しばらくして、歩行者用の「横断中」信号が点滅し、またしばらくして、すべての信号が消えて、自動車が通行可能になるというものである。

 BBCのウェブサイトでは、ロンドンのウォータールー駅前での開通(?)セレモニーで、当時の運輸大臣がパンダのぬいぐるみを持って渡っている姿の映像が公開されている。結構、間抜けな感じがするが、当人達はいたって真剣なようだ。その映像はこちらのBBCニュース(Watch/ListenのPLAY VIDEO)からご覧になれます(英語)。

 しかし、このパンダ・クロッシング、華々しくデビューしたものの、ややこしいと市民に不評だったようで、7年後の1969年(昭和44年)、ペリカン・クロッシングに取って代わられることになる。
 

☆押しボタン信号付きのペリカン横断歩道
Pedestrian_crossing_pelican  ペリカン・クロッシング(pelican crossing、ペリカン横断歩道)は、口ばしの大きなペリカン鳥の姿を模倣しているわけではなく、”PEdestrian LIght CONtrolled(歩行者信号制御式)”の略で付けられた名前である。不評だったパンダ・クロッシングを改良した押しボタン式信号つき横断歩道で、現在でもあちこちで見かけることができる。

 ペリカン・クロッシングは、日本の押しボタン式信号機付き横断歩道に一番近いもののように思う。歩行者用に、「歩いている人の絵のついた青信号」と「止まっている人の絵のついた赤信号」の2つが、自動車用には、青・黄(点滅)・赤の3つの信号が使われており、歩行者が押しボタンを押すと、信号が変わるというものである。

 基本的には、日本のものと変わらないのだが、驚いたことに応答が非常に速い。大抵、ボタンを押して10秒もしないうちに、信号が変わり、歩行者が渡ることができる。そして、またすぐに10秒もしないうちに、信号が変わり、自動車が通過できるようになる。歩行者によっても、運転者にとっても待ち時間が少ないので、大変効率的。
 待つのが嫌いで、交通量が少ないと押しボタン式信号を無視しがちだった私も、このペリカン・クロッシングのボタンだけは毎回かかさず押している。

 歩行者の横断が可能の時には、視覚障害者のために、音が鳴るようになっている。ただ、日本の「とうりゃんせ」や「だれかさんとだれかさんが」のような軽快な音楽ではなく、「ビビビビビビ・・・」という慌ただしいビープ音。もしかして、このちょっと耳障りな音がペリカンを模倣したものなのだろうか?
 

☆ユニバーサルデザインなツノメドリ横断歩道
Pedestrian_crossing_puffin  ペリカン・クロッシングは、迅速でとても便利なのだけど、お年寄りやベビーカーを引いた人、障害者の人にとっては、横断できる時間が短すぎる。そこで、1990年代に導入されたペリカン・クロッシングのユニバーサルデザイン版ともいうべきものが、パフィン・クロッシング(puffin crossing、ツノメドリ横断歩道)である。

 パフィン、ツノメドリは、カモメ科、ウミスズメ亜科に属する寒い海岸に生息する海鳥で、こちらではよく知られている鳥だ。名前を聞いたことがなくても、姿を見れば、「ああ、コレか!」と思われる人も多いのではないかと思う。

 このパフィン・クロッシングも、ツノメドリの姿とは何の関係もなく、”Pedestrian User-Friendly INterface(直訳「歩行者が使いやすい接続装置」)”の略で名付けられている。名前からして、現代っぽい感じ。

 ペリカン・クロッシングとの違いは、歩行者を感知するセンサーが付いている点である。横断中や歩道の縁石にいる歩行者を感知して、横断できる時間を延長してくれるので、臨機応変。歩行者にも運転者にも環境にも優しい。

 また、道路の向かい側の頭上にあった歩行者用の信号機が、押しボタン付近、つまり手元にあるので、信号を確認しやすく、視力が悪い人や、同時にあちこちを確認するのが困難なお年寄りにも親切だ。両側(左右)に押しボタンがあるのも気が利いている。もちろん、横断可能時のビープ音付きである。
 

☆自転車もご一緒に。オオハシ横断歩道
Pedestrian_crossingtoucan1  そして、ペリカン・クロッシングやパフィン・クロッシングの親戚といえるものが、ツーカン・クロッシング(toucan crossing、オオハシ横断歩道)だ。これは、「二つ(両者)とも渡れる」という意味の、”two can cross(「ツー・カン(キャン)・クロス」と発音)”をもじったもの。「ペリカン」、「ツノメドリ」に対して「オオハシ」と、鳥の種類まで親戚っぽい。

 この場合の「二つ(両者)」とは、歩行者と自転車のこと。信号の歩行者マークの隣に自転車マークが付いている。通常は、自転車は車両扱いで、道路わきを走り、自動車用の信号を守らないといけないが、ツーカン・クロッシングでは、自転車も歩行者と同じように横断歩道を渡ることができる。

 ツーカン・クロッシングには、ペリカン・クロッシングタイプ(横断延長なし)と、パフィン・クロッシングタイプ(延長あり・手元信号機)の両タイプがある。
 

☆馬用のペガサス横断歩道
 以上の横断歩道の名づけ方だけでも、充分イギリス的なのだが、横断歩道そのものが、まさにイギリスというのが、ペガサス・クロッシング(pegasus crossing、ペガサス横断歩道)である。
 まだ、お目にかかったことがないのだが、これは、なんと、馬に乗った人用の信号機である。通常の押しボタンに加えて、そのかなり上の方、乗馬した人の高さに合わせた位置に押しボタンがもう一個設置されている。馬は押さない。
 

☆その他、横断歩道あれこれ
 これらすべての信号機を総称して呼ぶときは、”pedestrian crossing(ペデストリアン・クロッシング、歩行者用横断歩道)”という言葉を使うのが適当だと思う。アメリカ英語では、”crosswalk(クロスウォーク)”と呼ぶらしいが、イギリスでは使わないようだ。

Pedestrian_crossing_2

 ゼブラ(とパンダ)以外の横断歩道は、縞模様ではなく、2本の点線が引いてあるだけ。中には消えかかっているものもある。運転者側からすると発見しにくそうだが、信号だけでなく、横断歩道付近の車道外側線がジクザクが目を引くので、安心できるように思う。

 交通量が多い道路では、中央分離帯に島を作って、その両側に信号を設置している横断歩道もある。この場合、一つの道路を一気に渡ることができないので、歩行者にとってはちょっと不便。車優先主義のような感じがしていたが、横断歩道と平行した車道からの車が右左折するときに、歩行者を巻き込むのを防ぐ目的があるようだ。
 

 
☆世界で一番有名な横断歩道?
Pedestrian_crossingabbey_road  ちなみに、ロンドンのはずれにあるアビーロード(Abbey Road)の横断歩道は、ビートルズの同名のアルバムジャケッの表紙になったことから、世界で一番有名な横断歩道としばしば呼ばれている。

日本盤CD   ABBEY ROAD(楽天市場)

 しかし、イギリス暮らしがすっかり板についた連合いが一言つぶやいた。「こんなの何処にでもあるじゃないか。」 

 確かに、その辺のゼブラ・クロッシングの写真を撮って、日本の知人に「アビーロードに行きました。」と言っても、皆だまされるかもしれない。
 

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コメント

うーん、なんとなくゼブラはシマウマを想起させるけど、
パンダとかペリカンとかは、ジョークっぽいですね。

日本語だと、からすの横断歩道、すずめの横断歩道
しまりすの横断歩道、猪の横断歩道って感じかな?

干支にちなんでいろんな横断歩道をつくると面白いかも。
ちなみに私はねずみなので、細い道用のやつとか。

いつもかわいいイラストに癒されております。

投稿: ぱんちゃん | 2007年1月 2日 (火) 20時11分

ぱんちゃん、コメントありがとうございます。

シマリスの横断歩道、猪の横断歩道←「けものみち」ですねw
イギリス人の言葉遊び好きがここにも表れている感じがします。

イラスト、お褒めにあずかり、ありがとうございます。
画才がないこともあり、今回は非常に時間がかかりました。
次回は連合いに任せようと思いますw

ところで、リクエストいただいた写真ですが、
「2007年お正月特別企画」として公開致しました。
(どうもありがとうございました。)
右カラムの「お知らせ」からご覧になれます。

投稿: ろっきぃ(管理人) | 2007年1月 2日 (火) 22時04分

おせち、すばらしいです。

父が、横断歩道の絵
シマウマ、パンダとかが横に並んでいる絵をみて
どうやって(何のソフトで)かいたのか?
とかなりライバル意識をもやしています。

我が家のお絵かきソフトは花子です。
私は、マックドローかAdobeのフォトショップ
しか使えないので、家でお絵かき出来ないんです。

もしよかったら「志賀@高槻」でGoogleで検索してください。
父のHPがみられるはず。

投稿: ぱんちゃん | 2007年1月 3日 (水) 13時05分

ぱんちゃん、再びコメントありがとうございます。
特別企画も見てくださって、ありがとう。

横断歩道の絵は、個人的にはかなりの超大作ですw
最初は横断歩道だけだったのですが、連合いの
「ここにそれぞれの動物があったらいいね~。」という
軽い一言でさらに地獄を味わいましたw

一番面倒だったのがシマウマ。
まさか、イギリスの物をご紹介していて、
シマウマの絵を描くことになろうとは・・・。
今後、キリンだのヒョウだのが出てこないことを
祈るばかりですw

ちなみに、実際の横断歩道には、その他の写真にあるように、
赤色(小豆色?)の点字ブロックが横断歩道脇の足元に
設置されており、ジグザくの車道外側線が横断歩道付近に
引いてあります。
当然どこも歩道との段差が殆どなく、万人に優しい設計に
なっているのが印象的です。

お父様のHP拝見しました。
素晴らしい充実度ですね。宜しくお伝えください。

投稿: ろっきぃ(管理人) | 2007年1月 3日 (水) 22時05分

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