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2006年10月 2日 (月)

(は) ハンプ HUMP

☆抜け道でも通らないのはなぜ?
 日本で自家用車通勤をしていた時のことだが、朝夕の渋滞に困りはてていると、職場の人が抜け道を教えてくれた。おかげでだいぶん時間が短縮されたのだが、この抜け道、住宅街や小学校の前などを通るものだった。細い見通しの悪い道ばかり。最初は恐る恐る走っていたものの、慣れてくるとそれほど気にならなくなってしまった。周りのもかなりのスピードを出している。ゆっくり走っていると煽られる始末。自分では、なるべく歩行者や住人の方の邪魔にならないように配慮していたつもりだったが、今から思うと、結構、迷惑な車だったかもしれない。

 広いイギリスの田舎の道路でも、時間帯によっては、かなりの渋滞になる。当然、抜け道を使う車も多くなりそうだが、思ったより、住宅街を通る車は少ない。見かけたと思ったら、すぐ側の家の駐車場に入って行ったり。ましてや、広い一般道と変わりない速度で走っている車を見たことがない。その理由は、ハンプや道幅制限、行き止まりなどが設置されているからだろう。
 

☆道路に設置されたこぶ、ハンプ
 ハンプ(hump)とは、道路を横切るように設けられた小さな盛り上がりのことである。”speed hump(スピード・ハンプ)”や”speed bump(スピード・バンプ、スピード防止帯)”、”road hump(ロード・ハンプ)”と呼ばれることもある。またの名を、”sleeping policeman(スリーピング・ポリスマン、眠っている警官)”。

 日本でも新興住宅の付近で時折目にすることがある。目の錯覚を利用した視覚ハンプや、材質を変えたハンプが、比較的新しい地域に設置されているように思う。

 残念ながら、ハンプはイギリス発祥のものではなく、スピード車による路上での事故を防ぐため、2001年(平成13年)頃から次々と導入された比較的新しいもののようである。

Hump_car

 ”hump(ハンプ)”とは、もともと「ラクダなどの(背中の)こぶ」のことをさす単語である。確かに道路にできたこぶのようだ。ゆっくり通過しないと、かなりの振動が来る。そのため、どのもハンプの前では必ず速度を落としているようだ。自転車も然り。
 心配なのは歩行者のことだが、こちらは、住宅街の細い道でも、案外、歩行者用道路が完備されている。なので、ハンプは歩行者の通行の妨げにはそれほどならないようだ。
 

☆古い町並みと新しいハンプ
Hump_close_look  イギリスの町並みは、たいてい、市の条例で守られている。を新築するにも許可がいるので、皆、建替えでなく内装を整備する。だから道路も古いままかと言えばそうではなく、町並みの雰囲気を残したまま、時代に合ったものが取り入れられているように思う。古い町並みのようでいて、こういうハンプのようなものが自然に設置されているのが、イギリスのよいところだと思う。
 

☆ハンプの問題と実際
 しかし、実はこのハンプ、地域によっては、住民からいろいろ苦情が寄せられているそうだ。例えば、ハンプを設置した付近に住んでいる人が、が通る度に、ドスンという騒音や振動に悩まされているそうだ。また、車で通過する側にも負担が大きいようで、障害者や持病を持っている人がハンプを通過する際の振動によって苦痛を受けているとも報道されている。中には、ハンプの導入によって、救急車に影響がでて、却って死亡率が増えているのではないかと指摘する人すらいる。

Hump_park この問題となっている地区に足を運んでいないし、今までハンプが設置されているすぐ近くの家に住んだことがないので、なんとも言えないのだが、2004年(平成16年)のロンドン議会の報告によれば、イギリス各地において、ハンプの導入により、事故で亡くなった人の割合は確実に減っているそうである。ロンドンの時速制限20マイル(32キロ)区間の統計を取ったところ、負傷者の数は平均45%(特に死傷者の数は平均57%)減ったとか。

 また、近隣住民への騒音・振動だが、ハンプと家との距離が規定以上であれば、振動により家に損傷が与えられることもなく、ハンプの導入により、車の通行量が減ることで騒音被害が軽減されているだろうとされている。実際に、騒音の届出は殆どないらしく、スピード車に怖い思いをするよりは、ハンプの音のほうがまだましだと考える住民もいるそうだ。

Hump_sign 少なくとも私の住んでいる地域に設置されているハンプは、例えば時速60キロを40キロ台に制限するために広い道に設置されたものではなく、狭い住宅街で道幅制限や行き止まりの補助的な役割で使われているといった感じである。
 ハンプのある道路の前には、道路標識が設置されているし、ハンプ自体に遠くからでも識別可能なマークがついているので、ある程度は威嚇効果を発揮して、心理的にその道に車が入りにくくなっているように思う。
 
 車や乗車している人への被害は、通常の乗用車であれば、時速制限20マイル(32キロ)という速度制限を守っている限り、車に負担がかかることはないとしている。それでも、緊急車やバスなどでは、車にもある程度負担はかかるようである。いずれにせよ、障害者や持病を持っている人にとっては、つらいことには変わりがないようだ。
 

 子供の頃、家の前の路上で近所の子供達とよく遊んだ。道路に寝転がっている子供すらいた。それは、ひとえに、その道が細い袋小路で車が殆ど入って来なかったからなのだが、親達の目も届きやすい安全な遊び場だったように思う。
  もちろん、子供を路上で遊ばせることはいけないことだし、道路で遊ばなくても、イギリスには、自宅の庭や広場や公園など子供たちが安全に遊べる場所がふんだんにある。そして、通学もスクールバスや親の送り迎えが基本なので、いわゆる「通学路」が殆どなく、日本とはだいぶん事情が異なる。
 それでも、パンプを見る度に、路上で遊んでいた子供たちの笑顔を思い出してしまうのはなぜだろう。
 
 ハンプで路上での事故が完全に防げるとも思わないし、それよりも重要なのは運転者の心がけなのだろうが、こういう小さな工夫で、「便利な抜け道」が少しでもなくなるといいなと思った。
 

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コメント

米国に滞在していた時に、
speed humpをよく見かけました。
当時は車を運転していなかったので、
「こんなのあるんだぁ」としか思っていませんでした。

考えてみると、日本こそ必要かもしれませんね。
私もよく裏道を通りますが、狭いところ多いです。
しかも2トン車運転すること多いし、気を付けなくては。
Mayby I can think of
this article as a sort of“speed hump”
運転に限らず心にspeed humpを持っていたいものです。

投稿: KAZU | 2006年10月 2日 (月) 06時10分

KAZUさん、コメントありがとうございます。

アメリカにもちゃんとあったんですね。
ハンプはアメリカ発祥のものなので、あってよかったですw

日本の狭い道路では、歩行者道とパンプの同時設置はなかなか難しいのかもしれませんね。
運転お気を付けて。

「心にspeed humpを」。いい言葉ですね。

投稿: ろっきぃ(管理人) | 2006年10月 2日 (月) 21時28分

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