« (ゆ) 郵便局 POST OFFICE | トップページ | (み) みかん [温州みかん] SATSUMA »

2006年7月10日 (月)

(め) 迷信 SUPERSTITION

☆「回復を祈って木に触って置くわ」
 渡英して間もないころ、うちのおちびの体調が悪くなった。おちびを看護してくれていた人が、帰り際に一言。”I will touch wood for him.(この子のために、木に触って置くわ。)”

 なんのことやら、さっぱり分からずに訊いたところ、「木に触る(touch wood、タッチ・ウッド)」とは、幸運を祈ってするおまじないだそうだ。生えている木でなくても、木製品でもいいらしい。日本で言えば、なんだろう。「神棚に手を合わせて置くわ。」のようなものだろうか。
 

☆黒猫は縁起がいい?
 イギリスにも日本と同様に、このような迷信が数多くある。ただ、同じものに対してでも、迷信の内容は違う場合がある。
 例えば、黒猫。日本では、黒猫が前を横切った場合、不吉なことが起こると言われているが、イギリスでは、黒猫は幸運のシンボルで、出会うと縁起のいいものである。
 また、日本では、数字の「4」や「9」が「死」や「苦」と同音なので忌み嫌われているが、イギリスでは、イエス・キリストが処刑された 13日の金曜日から、「13」が不吉な数字とされている。
 

☆子供のしつけと迷信---イギリスではさほど多くない
 日本では、迷信はしばしば、子供のしつけに使われる。私も子供の頃によく言われたものだ。「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」とか、「霊柩車を見たら親指を隠せ」とか。これは推測するに、昔は部屋の明かりが暗く、夜に爪を切ると怪我をしやすいので、それを戒めたり、他人の不幸に指をさして噂することを自戒させるものだろう。
 その他、「食後すぐに横になると牛になる」や「夜に(口)笛を吹くと、へびが出る」、「火遊びをすると寝小便をする」、「ご飯を残すと目がつぶれる」も同様で、子供に礼儀作法を教える際によく使われる迷信である。

 私は、「別に、死に目に会えなくてもいいよ。」とか「こんな都会にへびなんかでるわけない。」とか言っていた小生意気な子供だったが、目がつぶれるのが怖くて、ご飯だけは残さずべていたように思う。食い意地がはっているだけかもしれないが、今でもそうである。結構、これらの迷信は日本の子供達によく効いているのではないだろうか。

 こちらイギリスにも、同様のしつけのための迷信はある。「はしごの下を歩くのは不吉である」とか、「部屋の中で傘をさすとその人か家族に不運が起こる」、「靴を机やベッドの上に置くのはよくない」、「塩をこぼしてしまうと不幸になる」などである。しかし、日本に比べて、数も少ないし、礼儀作法というよりは、危険防止策や衛生面を配慮したもののような気がする。また、守らなかった時に訪れる不幸の具体性も欠いて効果半減な感じだ。イギリスにおいては、迷信は、日本ほど、礼儀作法を教える手段としては使われていないのだろう。
 (ちなみに、塩をこぼしてしまった際は、こぼしてしまった塩を拾って肩越しに塩をまくと不幸が中和されるそうだ。日本の葬式のお清めの塩に似ているが、こちらにはそういったお清めの塩の習慣はないようだ。)
 

☆イギリスの迷信の特徴---偶発的、魔術信仰がらみ 
 イギリスの迷信は、教育的なものよりもむしろ、自分ではどうにもならない偶発的なものとか、身近の動物に関するものが多いように思う。
 例えば、「四葉のクローバーを見つけると縁起がいい」、「てんとう虫が手のひらにとまったらそのブチの月数だけ幸運」とか、「白い馬を見かけると幸運」、「白いうさぎを月初めに見かけると幸運」、「カササギ(magpie)を見かけるのは、1羽目は不幸、2羽目からは幸運」などである。また、中には「すずめがの中に入ってくるのは、その家の誰かが死ぬ前兆」という恐ろしいものもある。

 また、魔術信仰と結びついているようなものも多い。
 例えば、「鏡を割ると7年不吉なことが起こる」である。これは、鏡にはそのうつっている人の魂が入っていると考えられているためだそうだ。また、魔女のお供であるコウモリが飛んでいるを見かけるのも縁起がよくない。蛙(かえる)も魔女が呪文を唱えるときに使うものなので、家の中に入ってくるのはよくないそうだ。上記の不運を呼ぶカササギも魔女が乗り移ったものだと考えられている。邪悪な目を彷彿させる孔雀の羽を家に飾るのもよくないそうだ。また、黒うさぎや蝶々にも人の魂が宿っていると言われている。

 これは私の勝手な推測なのだが、日本では、不幸なことが起こると、「罰(ばち)が当たった」と言われることがある。「祟り」という言葉もよく耳にする。その場合、罰を我々に当てたり、祟りをおこすのは、ものに宿る自然の神様だと考えられているように思う。一方、イギリスを含め、キリスト教文化の神は、ものにも宿っていないし、罰も与えない。もしかしたら、この魔術信仰めいた迷信は、不幸があった際の憤りを、神に理屈を付けて収めたり、あたったりすることができないため、代わりに生まれた文化なのかもしれない。
 

☆ラッキーアイテム
 魔術信仰と結びついているだけあって、(神頼みではない)幸運のおまもり、ラッキーアイテムもいくつかある。
 例えば、ラビット・フット(rabbit foot、うさぎの脚)である。これはアメリカの小説なのだが、昔、ダニエル・キースの『アルジャーノンに花束を』を読んだ際、主人公が大切に、このラビット・フットを持ち歩いているという描写があり、「うさぎの脚だなんて気味悪いな。」と思ったことがある。ラビット・フットは欧米ではメジャーなラッキーアイテムで、一説には、魔女が化身したうさぎを退治した証拠だといわれている。日本でも、一時期、ファッションとして、動物のシッポのようなふさふさしたキーホルダーを着けている若者がいたが、ラビット・フットの見た目はそういった感じの小さいものである。

アルジャーノンに花束を Book アルジャーノンに花束を 

著者:ダニエル キイス
販売元:早川書房

Amazon.co.jpで詳細を確認する 

Superstition_horseshoe  その他のラッキーアイテムとしては、蹄鉄がある。馬の蹄(ひづめ)を保護するためにつける鉄の輪である。英語では”horseshoe(ホースシュー、馬の靴)”と呼ばれる。たいていはU字型。使い方としては、「蹄鉄を玄関のドアに提げるとよい」そうだ。ただし、蹄鉄は提げる向きを逆にすると不幸になるので、要注意である。
 

Superstition_fingercross_1 ☆子供の遊びにそっくりの指交差のおまじない
 また、幸運を祈るおまじないとして、冒頭の木を触るおまじないのほかに、”(keep one's) fingers crossed(フィンガーズ・クロスト)”と言って、人差し指の上に中指を交差させるジェスチャーを使っている人をよく目にする。ジェスチャーを入れずに、口頭だけの場合も多い。このジェスチャーは、指で十字架を模しているのであるが、昔の日本の子供が追いかけっこなどの遊びの時に使った「バリア」「えんがちょ」にそっくりである。かつて、この遊びのしぐさをした者の一人として、大の大人がこのジェスチャーをしているのを見るのは、なんだか違和感がある。

 
追記: 恋の迷信については、こちらのバレンタインデーの記事をどうぞ。

ー最終更新日 10/Mar/2007ー

☆ランキングに参加しています☆
気に入ってくださったら、 ←クリックしていただけるとうれしいです。

|

« (ゆ) 郵便局 POST OFFICE | トップページ | (み) みかん [温州みかん] SATSUMA »

★同じものでも国によって違います。」カテゴリの記事

・暮らし(慣習・習慣・制度)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (ゆ) 郵便局 POST OFFICE | トップページ | (み) みかん [温州みかん] SATSUMA »